手洗いを習慣に【ジンバブエ便り vol.30】

ジンバブエでは、雨がすっかり降らなくなり、乾季になりました。ジンバブエは南半球に位置しているので、これからだんだんと寒くなります。朝晩はだいぶ冷え込むようになりました。

さて、今回は手洗いについてお話ししたいと思います。
私たちの支援しているゴクウェ・ノース地区では、まだ手洗いが習慣として十分に根付いているとはいえません。しかし、下痢や感染症などの予防には地域全体として取り組んでもらう必要があり、幅広く人々に手洗いを実践してもらわなくてはなりません。ADRA Japanは人々に衛生的な生活の大切さについて伝え、その実践を促すために、村や小・中学校のリーダーを対象にトレーニングを行なってきました。それと同時に、学んだことを実践できるように、今年の1月に5つの学校(4つの小学校と1つの中学校)にそれぞれ5基ずつ手洗い場を設置しました。
下の写真が、その手洗い場です。

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トイレの前に設置された手洗い場

この手洗い場は、ティピー・タップ(Tippy-Tap)と呼ばれています。仕組みは単純で、ペダルを足で踏むと棒にぶら下がっている小さなタンク(容量5L)が下向きになり、中に入っている水が流れ落ちるようになっています。ティピー・タップの良い点は、蛇口をひねる必要が無いので手が汚れずに済むことと、ペダルを踏みながら楽しく手が洗えることです。

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2人同時に手を洗える

先週、2つの小学校を訪ねて、ティピー・タップがどのように使われているかを確認しました。このティピー・タップは、以前ADRA Japanがジンバブエに設置した手洗い場とはか形が違い、子どもたちが上手く使えているか少し不安でしたが、そんな不安をよそに、多くの子どもたちが足でペダルを踏んで楽しそうに手を洗っていました。

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楽しそうにペダルを踏んで手を洗う子どもたち

訪ねた2つの小学校の1つであるマブウェマテマ(Mabwematema)小学校では、1人の男の子と話をしました。彼の名前はマシュー(Mathew)といい、年齢は12才で、この小学校に通う7年生です(ジンバブエの小学校は7年制)。マシュー君との話から、ティピー・タップがどのように使われているかが見えてきました。

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マブウェマテマ小学校
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話をしてくれたマシュー君

私(前川):「マシュー君、このティピー・タップのタンクの水は誰が汲んでくるの?」
マシュー君:「僕たちだよ。」
私:「今日は、誰が水を汲みに行ったの?」
マシュー君:「僕と他の子たち。」
私:「それって当番とか決まっているの?」
マシュー君:「うん。月曜日は3年生、火曜日は4年生、水曜日は5年生、木曜日は6年生、金曜日は7年生。」
私:「そうなんだ。でも、マシュー君7年生でしょ。今日は水曜日なのに、どうして水を汲みに行ったの?」
マシュー君:「僕は7年生だから、下の学年の子たちを井戸まで連れて行かなきゃいけないんだ。水曜日は、僕の当番の日なんだ。」
私:「そうなんだね。井戸は学校からどれくらいの所にあるの?」
マシュー君:「歩いて30分くらいかな。」

マシュー君によると、授業が始まる前の午前8時前に1回と、授業が終わってからの午後4時前後に1回の計2回、ティピー・タップの水を汲みに行くとのことでした。朝の水汲みは子どもたちのため、午後の水汲みは学校で暮らす先生たちのためだと話していました。

ティピー・タップに水を入れる子どもたち

こうした設備は、受け入れる側にそれをきちんと使い維持する体制や意思がないと、すぐに使われなくなったり捨てられてしまったりします。しかし、今回のマシュー君との話から、学校側がきちんと使い方を決め、それに沿ってティピー・タップが使われていることが分かりました。この学校ではティピー・タップが継続的に使われ、手洗いがしっかりと習慣として根付くに違いないと確信しました。

手洗い一つをとっても、人々のもつ長年の習慣を変えていくのは簡単ではありません。一歩一歩、地道に活動していくことがとても大切です。引き続き、皆様の温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

(この事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成も受けています。)

【今月のショナ語】

毎月、ジンバブエ便りでは現地で主に使われている言葉であるショナ語(ショナ族の言葉)の簡単なフレーズを紹介していきます。ショナ語は、ローマ字読みで発音できるので、是非声に出して覚えてみてください。ジンバブエでは他に英語、ンデベレ語(ンデベレ族の言葉)などが使われています。

Kuri kudziya(クリクズィヤ )
意味:涼しいよ。

木の下で授業を受ける子どもたち

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