ADRA Japanは2010年からジンバブエのミッドランド州ゴクウェ・ノース地区で支援活動を行っています。
この支援の一環として、2017年3月から新たな教育事業を開始しました。主な活動は 校舎と教員住宅の建設、これまで学校に通っていなかった子どもたちへのノンフォーマル教育(放課後学習)です。
事業開始時にスタッフを募集した際、建設技術の専門知識と経験を持つスタッフがなかなか決まらず、最後に期待をもって採用したのがジョイス・ンビリリ(Joyce Mbiriri)でした。採用当時、ジョイスは学校で建設技術を教えていましたが、教職を辞めてADRAに参加しました。
教室の中だけではなく、実践的な場で学びにつなげる仕事がしたい、そして厳しい状況で生活している人々のために働きたい、という希望を持っていました。
この事業では、各学校のコミュニティに暮らす住民が建設作業員、大工、塗装工、そしてボランティアとなって校舎建設を進めています。事業の開始時に、校舎建設に必要な基礎トレーニングを行った後は、全て自分たちで工事を行います。工事に関わる人々の中には、建設工事の経験がある人はいますが、学校で専門的に建設を学んだ人はいません。文字の読み書きができない人もいます。ジョイスは、現場で技術的なアドバイスをし、サポートします。
ある日ジョイスから、建設作業員に時間があるときに彼女が持っている教科書を使って、建設工事の基本的なレクチャーをしていると聞きました。その後、彼女は作業員たちが自習できるように教科書のコピーを渡し、宿題も出すようになりました。文字の読み書きができない人は、自宅で子どもに読み書きを手伝ってもらいます。
さらに、ジョイスは地区にある職業訓練校の建設の指導員に定期的に事業地まで来てもらい、建設工事の講義をしてもらう橋渡しもしました。講義に関心のある作業員と大工が自分たちで受講料を払い、学習を始めました。全ての課程を修了すると、修了書が発行され、建設関係の試験を受ける資格を得ることができます。
ジョイスの働きかけにより、作業員がこれまで経験のみで行っていたものが、専門知識によって裏付けされました。それは作業の質の向上につながっただけではなく、作業員の自信にもなりました。
ジョイスが女性ということで、はじめは少し懐疑的だった住民たちも、次第に彼女を信頼し尊敬するようになりました。現在、事業地で、ジョイスはママ・ンビリリと親しみと尊敬を持って呼ばれています。
ジョイスは結婚し子どもを出産後、大学に進学し現在のキャリアを築いてきました。妻であり、5人の子どもの母親であり、2人の孫のお祖母ちゃんであり、土木技師であり、先生であり、そしてADRAのスタッフです。責任感が強く、しなやかで、優しく、皆に頼られるスーパーウーマンです。
現在の彼女の夢は、ゴクウェ・ノース地区の建設現場で働く女性の数を増やすことと、土木技師の修士課程に進学することです。
本事業の工事現場では、すでにひとりの女性が建設作業員のアシスタントとして働き始めています。ジョイスの夢が実現する日もそう遠くないようです。この事業は、ジョイスをはじめとする熱意を持った力強いスタッフによって日々進められています。
引き続き、ご支援、どうぞよろしくお願い致します。
(本事業は、皆様からのご寄付のほか、外務省NGO連携無償資金協力の助成も受けて実施しています。)