教育の力【ジンバブエ便りvol.55 】

今回のジンバブエ便りでは、現在ジンバブエ西部ゴクウェ・ノース地区において実施している教育事業で、支援している学校の生徒たちのサクセスストーリーをお届けします。

現在実施している教育事業では、過去に学校を中退した生徒など様々な事情から通常学級に通うことが難しい子どもたちを対象に、特別開設クラスを開校しています。

※特別開設クラスの詳細に関してはブログのバックナンバー「ジンバブエ便りVol.43 今日は「世界子どもの日」 」を参照にしてください。

特別開設クラスの授業の様子
特別開設クラスの生徒たち
(ADRAの事業で建設した新校舎をバックに)

本教育事業で支援を行う3校、計90名の特別開設クラスの生徒の中から、今回はネニュンカ小学校の生徒についてご紹介します。

シリンダイル・ムザンバ(Silindile Muzamba)さん 15歳

ムザンバ一家はブタ村(Bhuta village)に暮らしています。

ムザンバ一家には8人の子どもたちがいますが、誰も学校に通っていませんでした。

ADRAの教育啓発活動の一環としてボランティアがムザンバ一家を訪問し、両親と話し合いました。

ボランティアは、子ども達を学校に通わせ、教育を受けさせることで、彼らが自分や家族、村のことをもっと考える力を持つことができるし、例えば早期結婚を防いだり、より良い将来設計ができるようになる、と根気強く説得しました。

この話し合いで両親は教育の重要性を理解し、学齢期にある5人の子どもたちを学校に送ると決めてくれました。

シリンダイルさんはそのうちの1人でした。

読み書きの経験もなく、人生で初めて学校に通うこととなったシリンダイルさんにとって、当初学校の授業は、楽しいものではありませんでした。

他の生徒たちが勉強をしている間、彼女は皆とは離れて木陰で休み、先生に水汲みを頼まれれば「お金をくれるのか?」と
聞き返したほどでした。

それでもシリンダイルさんは毎日学校に通ってきました。

字を書くことも、本をきちんと持つことさえできなかった彼女に、先生たちは一つ一つ教えていきました。

そうしているうちに、字を左から右に書くことができるようになり、授業にも参加するようになりました。

先生に対する態度も明らかに変わっていきました。

そのうち、「もっと宿題を出して!」と言うまでに、「学ぶこと」を楽しむようになったのです。

クラス活動にも活発に参加し、自分の意見を言うようにもなりました。

学期の終わり、クラスで一番の成績を取って模範生に選ばれたのはシリンダイルさんでした。

現在は学力が上のレベル2のクラスに進級し、勉強に励んでいます。

全世界で広がる新型コロナウイルス感染症の影響で、ジンバブエでは2021年3月までに2度に渡るロックダウンが施行され、子どもたちはおよそ9か月間学校に通うことができませんでした。

先進国の中には、このコロナ禍でオンライン授業を実施する国も多いですが、開発途上国であるジンバブエのゴクウェ・ノース地区はオンライン授業を学校が実施し、それを生徒たちが自宅で受講できるような環境は整っていません。

ほとんどの場所はラジオの電波すら届かない地域です。

ロックダウンは3月に解除され、政府の方針で子どもたちは新たな学年に進級しました。

子どもたちは前学年で終わらなかった単元の後れを取り戻すべく、みんな勉強に励んでいます。

※コロナ禍のジンバブエの様子に関しては、ブログのバックナンバー
ジンバブエ便りVol. 48 ~世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう今、ジンバブエはどうなっているのか~」を参照してください。

教育啓発活動を実施したボランティアたち
子どもたちの通学路

ジンバブエから遠く離れた東京の事務所にて、本教育事業の後方支援を行う中で、シリンダイルさんや同じように学ぶ子ども達に思いを馳せながら、私も日々の業務に励んでいます。

※この事業は外務省の日本NGO連携無償資金協力と皆さまからの寄付金で実施しています。

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