命をつなぐ水を探して【ジンバブエ便り Vol. 14】

この写真のペットボトルに入った薄茶色の水、みなさんは何だと思いますか?
これは、私たちが事業を実施していた地域、ゴクウェ・ノースの人々が日常的に飲んでいる水です。

ADRA Japanでは、外務省NGO連携無償資金協力の助成も受け、ゴクウェ・ノースにおける水衛生事業を実施してきました。今回は、事業を行なう上で一つの大きなチャレンジとなったことについてご紹介したいと思います。

これまで何度かブログでお伝えしてきましたが、私たちの事業地ゴクウェ・ノースは、ジンバブエ国内でも有名な乾燥地帯です。一言で乾燥地帯と言っても、広大な地域なので、場所によって多少の差があります。

ADRA Japanでは5ヶ月に渡って7つの小中学校で井戸の掘削を行ないましたが、最も浅い場所ではわずかに地下15メートルほどで一つ目の水脈が見つかりました。

一方、全く水脈に出会えなかったガンガンガ(Ganganga)小学校周辺では、約100メートルの掘削を二つの地点で行ないましたが、一滴の水も出ませんでした・・・。「一滴の水さえも」です。

通常、水脈がある場所では、水分を含んだ緑の植物が多く見られます。ゴクウェ・ノースでは、日本でよく見られるような辺り一帯が緑に囲まれた地域は稀ですが、それでも緑の植物をひとつの目安として、水脈があるという期待を持つことができます。

ところが、ガンガンガ小学校の周りには、下の写真のような茶色の草木ばかりで、安全な飲み水を確保するための井戸どころか、小川さえもありません。

ガンガンガ小学校周辺。茶色い草木が乾燥地帯であることを象徴している

 
ゴクウェ・ノースの小中学校は、ジンバブエ国内の他の地域と同様、コンクリートの校舎が一般的ですが、ガンガンガ小学校は少し違います。この小学校の校舎は、木の壁とわらの屋根でできており、コンクリートを使わずに作られています。

なぜなら小学校の周辺では、セメントと砂、砂利を混ぜるために十分な水が確保できないからです。

ガンガンガ小学校の校舎。コンクリートを使わずに作られている

9月中旬、ガンガンガ小学校で井戸掘りを行ないました。工事は何日にもわたり、朝早くから日暮れ時まで、地域住民や深井戸会社の人々、また、ADRAのスタッフに見守られながらの作業でした。

ゴクウェ・ノースでは、地下数十メートルに至るまで水脈が見つからないことが珍しくありませんが、残念ながらガンガンガ小学校では、他の場所よりもはるかに深い約100メートルを掘り続けても、水脈を見つけることはできませんでした。

井戸を掘る際には、基本的には事前に地質調査を行なって一定の区域の中で最も水脈が見つかる可能性が高い場所を選びます。今回も他の場所と同じく、調査を行なった上で井戸掘りを始めましたが、水脈は見つからなかったのです。

みなさんは不思議に思うかもしれません。このような地域に住む住民は、どこから水を手に入れているのだろうかと。
実は1箇所だけ、わずかに水が湧き出ている小さな水溜りのような場所があります。

この場所は付近の住民にとって唯一の水源なので、多くの住民はバケツでたった1杯の水を得るために、数キロもの道のりを何十分も歩いていくのです。

バケツと言っても、私たちが想像するような小さなものではなく、20リットルもの水が入る大きなものです。このバケツを満タンにするためには、小さな水源を枯らさないよう、何時間もかけて水を汲まなければなりません。

川も井戸もない場所に湧き出ているその水に住民たちは神秘的な力を感じ、そのわずかな水に頼って生活しています。
この水は茶色く濁っていますが、住民にとっては、命をつなぐたった一つの貴重な財産なのです。


ガンガンガ小学校から2キロほどの地点にあるたったひとつの水源

掘削の後、深井戸会社や周辺住民との話し合いを持ち、雨季が近づいていることもあって、2011年中の深井戸掘削は断念することとなりました。乾燥地帯での井戸掘りは容易ではありません。本当に井戸が必要とされている地域だからこそ、そのプロセスは長く忍耐を要するものなのです。

深井戸会社、地域住民との会合

ゴクウェ・ノースには、今この時も水を必要としている人々がいます。支援を必要としている人々のために、ADRA Japan では今後もジンバブエでの長期的な支援を続けて参ります。引き続き、みなさまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

(文責:ジンバブエ事業担当 前田絵梨子)

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