ゴクウェ・ノース地区の井戸事情【ジンバブエ便り vol.20】

日本は10月に入り、秋がぐんと深まってきました。
一方、南半球に位置するジンバブエでは気温が上がり始め、夏を迎えつつあります。ハラレ市内では、日本の桜のように春を告げるジャカランダの木々が、紫の花をつけています。

さて、今回はゴクウェ・ノース地区にある井戸の種類についてお話したいと思います。

ゴクウェ・ノース地区の人々は、水源として主に井戸と川を利用しています。しかし、川の水は井戸の水と比べて、動物の糞尿などによって汚染されていることが多く、飲料水として安全ではありません。そのため、川の水を使うということは、人々が感染症などに晒されるリスクが高くなるということです。


このような状況を改善するために、井戸などをしっかりと整備して安全な水にアクセスできる環境を整えなくてはなりません。

現地で使われている井戸には、大きく分けて浅井戸と深井戸の2種類があります。

浅井戸は通常10m前後の深さがあり、川などから地中に染み込んだ比較的地表に近い位置を流れる地下水を汲み上げることができます。設置作業は、すべて人の手によって行なわれます。シャベルなどを使って地面を掘り、その穴の壁面や穴の上部をセメントで固めます。そして、水が汲み上げられるように、つるべを備え付けます。

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昨年ADRA Japanが設置した浅井戸。紐の先にバケツをつけて井戸に落とし、それを巻き上げて水を汲む。井戸水をきれいに保つため、井戸を使用していない時は蓋をしてある。なお、昨年の事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施されました

一方、深井戸は通常30m以上の深さがあり、地中深くに流れる帯水層と呼ばれる地層から地下水を汲み上げます。ゴクウェ・ノース地区で最も深い深井戸は約500mもの深さがあります。深井戸は人の手によって掘削することは難しいため、通常、掘削業者のドリルを使って作業が行なわれます。

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昨年ADRA Japanが設置した深井戸。
浅井戸とは異なりポンプ式になっている。
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深井戸の掘削の様子。地中から水が吹き上がっている

このように、浅井戸と深井戸では汲み上げる地下水やその設置方法に違いがあります。浅井戸を設置するか、深井戸を設置するかという判断は、その地域の地形や地質に基づいてなされます。川や木々が近くにあり、地表近くに地下水が流れていると想定される場所では、浅井戸が設置されます。

一方、地表近くに地下水が流れていないと考えられる場合には、地形や地質を調査して、地下深くに帯水層があるか確かめます。帯水層があると判断された場合には、深井戸を設置します。しかし、仮に十分な水量があっても、塩分やフッ素が多く含まれているために、飲料に適さないということもあります。

特に、ADRAが事業を行なう地区では、深度が大きくなればなるほどフッ素が含まれる確率が高くなるとされています。フッ素は、虫歯予防に効果があるとして日本でも知られていますが、多量に摂取すると骨などに健康被害を引き起こす恐れがあります。そのような水を現地の人々に提供することはできません。

ゴクウェ・ノース地区では、安全な水が慢性的に不足しています。そのため、浅井戸や深井戸の設置が急務となっていますが、地形や地質の関係から井戸の設置が難しいと考えられる場所も多くあります。したがって、井戸以外の手段を用いて安全な水を確保していく必要があります。

その、井戸以外の安全な水源の整備方法については、次回のブログでお話したいと思います。

【今月のショナ語】

毎月、ジンバブエ便りでは現地で主に使われている言葉であるショナ語(ショナ族の言葉)の簡単なフレーズを紹介していきます。ショナ語は、ローマ字読みで発音できるので、是非声に出して覚えてみてください。ジンバブエでは他に英語、ンデベレ語(ンデベレ族の言葉)などが使われています。

Maitabasa!(マイタバサ)
意味:ありがとう!

  

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小学校の子どもたち

(文責:ジンバブエ事業担当 前川龍太)

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