家族の日常|スロバキア出張記#6

こんにちは、ADRAの永井温子です。
7日間のスロバキア出張記、第6日目をお届けします。今回は、避難生活の中でも家族の絆を強く感じさせてくれた、二人の男の子とお父さんのことをご紹介させてください。

サンタに扮したスタッフが、子どもたち一人ひとりの名前を呼び、クリスマスプレゼントを手渡す様子を、部屋の隅のソファーに座って静かに見ている男の子がいました。サンタさんに呼ばれている子どもたちよりも年齢が上のようです。

少しさみしそうに見えた表情に、もしかしたらこんな風に「自分は対象ではない」という状況には慣れているのかもしれないなと想像しながら、様子を伺っていました。

すると、クリスマスプレゼントを受け取った小さな男の子が、彼の隣に座り、短い言葉を交わした後に、青いリボンをほどいてプレゼントを開け始めました。兄弟のようです。

表情をころころ変えながら、袋の中に入っているぬいぐるみやお菓子を一つひとつ手に取る弟の様子を、お兄ちゃんがそっと見守っています。弟が、折り紙のギフト「パタパタはと」を手に取ったとき、「それ、日本の子どもたちが作ったものだよ」と試しに英語で話しかけてみました。もし通じなかったら翻訳アプリを使おうと思ったのですが、彼は英語がわかるようです。

「これ、なんていうんでしたっけ?」と聞く彼に「ORIGAMI(折り紙)だよ」と伝えると、あぁそうだった!と、お兄ちゃんの顔がぱっと明るくなりました。折り紙が好きで、自分でも折っていたことがあるそうです。

新しい折り紙を出して、「これはあなたの分ね」とひとつ折り、しっぽを引っ張ってパタパタと動かして見せました。期待した通りの反応で、目を大きく開き、笑顔になります。弟くんのとおんなじ、これも動くからねと伝えると、お兄ちゃんが訳してくれました。

彼は14歳、弟は7歳、ちょうど私の次男、三男と同じ年齢です。英語が上手だねと声をかけると、「ウクライナ語、ロシア語、英語、スロバキア語、4つできるようになりました」と少し照れたように言います。弟くんに訳をそっと伝えるとき、弟もじっと耳を傾けていて、普段から2人で助け合いながら過ごしている様子が伺えました。

帰り支度を始めた二人のそばに、一人の男性が近づいてきます。センターに到着されたときに、2~3言葉を交わした方でした。仕事終わりに来たことや、同じ年齢の息子たちがいることで意気投合した会話がよみがえります。

帰り支度を見守っていると、この出張の中で、一番の幸せを感じた言葉が発せられました。

「妻が家で、食事を作って待っているので」

学校帰りに、子どもたちはセンターで過ごす。仕事を終えた父親が迎えに来て、一足先に帰っている母親が食事の支度をする。それは、私も知っている日常の姿です。

職や住まいの選択肢が少なく、故郷が戦争の中にある日々は、肉体的にも精神的にも苦しいものに違いありません。その中でも、家族と一緒に過ごし、食卓を囲める時間があるということが、せめてもの救いであり支えだと感じます。この時が守られることを心から願っています。

次回は、この出張記の最後となります。ウクライナの隣国で過ごした1週間を振り返り、私たちの活動にどんな意味があったか、また、これからどんな役割を果たせるか、私なりに考えたことをまとめたいと思います。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました!
また次回のブログでお会いしましょう~!

ADRA Japan 永井温子

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