家族との距離|スロバキア出張記#4

こんばんは、ADRAの永井温子です。

7日間のスロバキア出張記、第4日目をお届けします。この日は電車で5時間かけて、別の避難民センターがあるケジュマロクに向かいました。

電車の通路を挟んだ隣の席で、同僚が、ケジュマロクのセンターの運営を支えてきたウクライナ人スタッフの話をしているのが耳に入ってきました。彼女は、最近、ウクライナに帰ることになったそうです。

「もともと彼女は婚約したばかりのフィアンセと避難してくるつもりだったんですよ。でも、婚約したばかりの彼と避難することを決めてすぐに、成人男性がウクライナから出国できなくなってしまって。それで彼女は、結局ひとりで来たんです。だから、気持ちはずっと帰りたい。それしかなくて…」

そう同僚が話すのを聞くうちに、一番一緒にいたい人と離れ離れになってしまう辛さや、彼が残る町が何度も繰り返し砲撃にあっている事実の重さに感情が揺さぶられ、鼻の奥がツンとしました。泣いたらだめだと思えば思うほど涙を抑えられなくなり、同僚に「今だけ許して」と、私はタオルに顔を埋めました。

ケジュマロクの避難民センターは、笑顔と温かさであふれていました。この日は特に、セント・ニコラス・デーのイベントが行われ、サンタクロースに扮したスタッフと子どもたちの盛り上がる声が響き、私たちも日本の文化紹介をして、皆さんに楽しんでもらうことができました。


(写真:筆ペンを使って日本語で名前を書くワークが大人気でした)

イベントが終わり、センターが少し静かになった頃のことです。バックヤードのソファーに座るスタッフが、スマートフォン越しに誰かと話しているところに出くわしました。

画面を指さし、ウクライナにいる夫だと言います。すでに暗くなっている外で、細かい雪が降る中、毛のついたオーバーを羽織り、私にも手を振ってくれました。

「彼は軍隊にいるの。今日は休みなんだけど、もう毎日毎日心配で!」

電話を切ったあと、彼女はそう明るく振る舞っていましたが、胸中は不安でいっぱいに違いありません。

遠くにいる家族を思う気持ち。

私自身、この1週間は家族と離れて過ごしましたが、連絡は「飛行機に乗るよ」「着いたよ」などの短いチャットだけ。帰国前日の朝、子どもたちに「明日の夜に帰るよ」と伝えたビデオ通話が唯一の会話でした。同じように家族と離れている状況でも、命の心配をしなくてすむことの価値に、正直私は気が付いていませんでした。

彼女が安心できる日が、一日も早く来ることを願ってやみません。

次回の配信では、このケジュマロクのセンターで出会った男性からの問いと、ある家族をご紹介したいと思います。ご感想も、送っていただけたら嬉しいです!

それでは、また明日お会いしましょう。
お読みいただき、ありがとうございました!

ADRA Japan 永井温子

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