内戦の続くシリアで生活する48歳のアブドラさんは、4歳から7歳の子ども3人を抱え、妊娠7か月の奥さんの身を案じながら、安全な場所を求めて国内を移動していました。そこで、地震に遭遇します。
「私と家族は2012年に避難しました。ようやく平穏な暮らしを手に入れたかと思っていたのですが、残念なことに地震が起こり、事態はさらに悪化しました。早朝、目を覚ますと、まるで地面が沸騰して悲鳴を上げているかのようでした。とても恐ろしかったです。その壊滅的な被害は、想像を超えていました」
2023年2月6日の午前4時17分にマグニチュード 7.8の地震がトルコ南東部とシリアの国境沿いを襲いました。アブドラさんも、その被害を受けたのです。
「妻と私は子供たちを抱え、あるいは手を握り、川の中に逃げました。2時間ほど川に滞在した後、モスクに避難し、およそ1週間過ごしました。その後、状況を確認するため、自宅に戻ってきたのです。大きな衝撃を受けましたね……。キッチン、バスルーム、さらにはトイレも完全に壊れており、窓もドアも割れ、壁も崩れていました。
家を修繕したくても、お金がありません。家賃も払えません。私は失業して一文無しになりました。できることが何もなく、ただ茫然とするしかありませんでした。ドアのない家で、危険を感じました。家族の身を案じながら眠れない夜を過ごしました。寒さとの戦いもありました。冷たい外気から子どもたちを守りたいと思いましたが、自分の力では限界がありました。
そんな時、どこからともなくADRAのスタッフが現れてドアを開け、地震で被害を受けた人々に、聞き込みをしてくれたのです。まるで神が彼らを遣してくれたように感じましたね。ADRAの人々は何が必要かをメモし、修復作業に取りかかってくれました。新しいドア、窓、さらには配管も設置されました。私たちの家には、バスルーム、トイレ、そして台所がそろっています。家族は、安全に温かい部屋で過ごせています。私たちの子どもは、医者、エンジニア、また、ADRA のような人道支援者になる夢を持つことができるようになりました。私は働きながら子どもたちを学校に通わせています。私たちの新しい生命は女の子なので、私の家の修復工事を指示した女性エンジニアの方と同じ名を付けます。ADRAのすべてのメンバーに感謝の意を表します」
地震が発生した2023年2月6日は、約9時間後の13時24分にもマグニチュード7クラスの余震が発生し、トルコ・シリアの両国で延べ5万6000人以上の方の尊い命が奪われました。ADRAは、即、シリアのアレッポ、ラタキア、ハマの各県にインスタント食品などの食料や水、生理用品、おむつ、下着などを届けました。
その後も被災された方々の声を聞きながら、500枚の毛布と、250枚のマットを含む物資支援、家庭用、避難所用のゴミ箱を配り、かつ、水道管の配管などの復旧作業に力を注ぎ、水タンク、発電機2台、溶接機1台を設置し、太陽光発電と電気システムも備え、1年間で延べ1,796,142人に支援を実施しました。
今も現地で必要とされている支援に基き、人々の自立を目指し、そして「ひとつの命から世界を変える」をモットーに、一人ひとりに寄り添って活動しています。
皆さまからの温かいご支援を、お待ちしています。