
2025年4月19日・20日、ADRA Japanは代々木公園で催されたアースデイ東京2025に参加しました。
出展を記念して、事業部スタッフが日頃携わっている事業を環境やサステイナビリティの視点から紹介します。
舗装されていない細い田舎道をガタゴトと進むCNG。CNGとは、バングラデシュに多い3輪の公共交通の乗り物だ。揺られながら、頬に吹き付ける風が気持ちいい。
2024年11月上旬、現地フィールド調査のために、私はバングラデシュの首都ダッカから120kmほど北上した地、マイメンシン県に来ていた。片側には瓢箪などの野菜畑が、反対には水田が広がっていた。

バングラデシュは2023年のWorld Risk Reportにおいて、そのWorld risk Indexが世界ランク9位となっており、災害が起こるリスクや起きた際の脆弱性が世界的にも非常に高い国に分類された。またロンドン大学の研究では、2028年に大洪水が起これば国土の半分が浸水すると予測されている。

この日は、村人へのインタビューを行うため、対象としていたケショルゴンジユニオンの町に正午前に到着した。当地で捕まえたCNGで田舎道を走りながら、畑の中ほどで農作業をしている村人を見つけると、現地スタッフが大声で「お~い」と村人に声をかけた。呼びかけられた40代ほどとみられる男性が手を止めて、ゆっくりと我々がいる道端までやってきてくれた。挨拶をして、許可を取り、インタビューを始めた。

紺とオレンジのチェック柄のロンギと呼ばれるバングラデシュの布を腰に巻き、オレンジ色ベースの別の布を肩から上半身に巻いた彼の身体は、農作業中にかいた汗で光っていた。つい先ほどまで仕事をしていた畑を指さしながら、ナスや豆などの野菜を育てていることを教えてくれる。彼はそのほか、米も育てていた。マイメンシンでは、この時期多くの農家が春先に植えたアモン米の収穫を目前に控えていた。
「2~3カタ(1カタ=6~10 decimals)(1 decimalは40㎡)の水田で米を育てていたけれど、1か月前の洪水で全部ダメになったんだ」

彼はこう呟いた。機械もない中で、どれほど大変な思いで米を育てたのだろうかと想像すると、彼に掛けられる言葉が私には見つけられなかった。
この地の気候変動は深刻だ。雨季なのに降水量が無に等しく、作物が暑さと乾燥で干ばつ被害を受けたと思えば、急な鉄砲雨で洪水が起こり、畑が水浸しになる。そうした被害を受けて、村人の中には、以前は信じもしなかった天気予報を確認し、悪天が予想されていれば、少し早めでも作物の収穫をするようになったという人々もいた。
今回の調査で、当地域では調査対象となった450世帯の農家のうち、78%が過去に生計の維持に困ったことがあると回答した。そのうち23%はその原因が自然災害だったと答えている。
天災で最も被害を受けるのは脆弱な人々だ。現在ADRAでは、本フィールド調査に基づいた事業立案を行っている。実際に、マイメンシンの村で起きていることを自身の目で確認し、気候変動と戦う村人に直接話を聞いてきたのは私だ。国の経済成長と比例するかのように加速するこの環境問題とどう向き合っていくか。村人たちと一緒に考えていきたい。
(文責:高橋睦美)