「桜の花咲く季節に思う」

喜びよりも切なさが勝るのは、桜の儚さからか、あるいは出会いと別れの季節だからか…。

息子の卒園と入学を彩ってくれた昨年の桜は、いつにも増して感慨深いものがあった。

昨年、入学式の日の桜

0歳5か月から、転園を繰り返し、1つの幼稚園と2つの保育園に通った。まだ寝がえりもできない赤ちゃんの息子を、預けるというより園の保育室の床に置き、仕事に向かった日々。毎日のように息子を連れて公園に通った、コロナ禍の緊急事態宣言期間。当たり前のように通っていた保育園への通園を拒否し始め、母の足にあらん限りの力でしがみつき、頑なに園の玄関を入らなかった日々もが走馬灯のように駆け巡り、息子の成長の嬉しさと寂しさがない交ぜになった昨年の春。

そして、体に似合わず大きなランドセルと、着慣れないスーツに身を包み迎えた入学式。これから始まる新生活に、子も親も、楽しみより不安が大きかった昨年の春からもうすぐ一年になる。保育園とは違い、自分の机と椅子が用意され、30人を超える児童が一クラスに集められ、多くの時間を勉強が占める小学校の生活は戸惑いも大きかっただろう。しかし、一年が経ち、今では体格も態度もすっかり小学生男子のそれになった。

今年も娘の保育園、そして息子の小学校では友達との別れと出会いの季節がやってくる。例年と変わらず桜が華を添えてくれるだろう。

日本と同じように3月下旬から4月上旬にかけて、儚いピンク色の花をつける木が、パキスタンやアフガニスタンでも花開くことをご存知だろうか。

この季節、桜とよく似た薄いピンク色の花びらを持つアーモンドの花がアフガニスタンやパキスタン北部に咲き誇る。

フンザ渓谷に咲き誇るアーモンドの花(著作権フリーサイトshutterstock.comより)

パキスタン駐在中、何度か足を運んだフンザ渓谷が、一面、淡いピンク色の花で埋め尽くされる光景ほど「桃源郷」という言葉がふさわしい場所を、私は他に知らない。

そしてアフガニスタンでは、日本と同じく、アーモンドの花が咲き誇る3月末から新学期が始まる。日本の子どもたちと同じく、淡いピンク色の花に彩られ、子どもたちは進級、進学を迎える。

しかし、2022年3月、タリバン暫定政権が少女の中学校への入学を禁止して以降、当たり前だったはずの3月からの新学期を、中学生以上の少女たちは迎えられていない。

世界中の子どもたちが当たり前のようにわくわくどきどきする新学期。しかし、学校に通うことが禁止されたアフガニスタンの女の子たちからは、その不安も、期待も、奪われた。

ピンクに咲き誇るアーモンドの花をみて、アフガンの少女は何を思うのだろうか。

「宿題が多すぎる」「勉強が大変」と口先では言うが、毎日学ぶことすべてが新しく、新鮮で、知識が増える喜びに溢れている息子を見ていると思う。学ぶという喜びを子どもたちから奪うことがどれほど残酷なことかと。

息子と同じように、アフガニスタンのすべての少女たちが、期待と不安を胸に学校の門をくぐれる日が一日でも早く来てほしい。

(執筆:堀 真希子)

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