ある日、スマホに保存された写真の一覧を見ていたら、英語で書かれたボトルが映っていた。Magnesium Glycinate。日本語で「グリシン酸マグネシウム」。日常的に摂っているサプリメントで、飲み切ってしまったため注文しようと思い、忘備録として撮影したものだ。
私は昔から、健康意識が高い。高校生になって自分でお金を稼ぐようになった頃、思春期の女子らしくスキンケアやダイエットに関するアンテナをはり、自身の悩みを解決してくれそうなサプリメントを購入して飲んでいた。その後渡米し、甘いものとフライドポテトが大好物だった私の身体はみるみるうちに厚みを増していったが、自宅ではストレッチ、外ではジムやヨガに通い、身体のメンテナンスに精を出していた。結婚して娘を出産すると、我が子が口にするものに対して敏感になり、一時、食品添加物フリー、グルテンフリー、カゼインフリー生活を送った。今はゆるく行う程度であるが、二人の子どもは勿論、元ヘビースモーカーで今も飲酒が欠かせない夫や、90を超えた同居の祖母の健康管理も、私が抱える大事な仕事の一つである。
気づけば人の身体ばかり気にするようになっていた私だったが、自分は風邪をひくこともなければ健康診断の結果も良好。元気はつらつと過ごしていた。いや、過ごしていると思っていた。しかし、それは大きな勘違いであったことが、今になってわかる。
2年前のある日、栄養カウンセリングを専門とする友人のアドバイスに応じて自身の生活を見直したことをきっかけに、それまで当たり前だと思っていた小さな不調や不便が解消・改善された。産後から続いていた抜け毛は止まり、太るどころかやせ細ったまま戻らなかった体重が適正になった。水仕事をしても手荒れしなくなり、それまで大好きだった甘いものへの欲求が一切なくなった。更には気分の波も落ち着き、子どもに対するイライラも減少した。理由は、継続的な栄養改善によって身体のコンディションが整ったからに他ならなかった。
以来、食事+サプリメントの力で健康を楽しむ私だが、いつも頭に浮かぶのは、支援する国の人々のことだ。アフガニスタンには、5歳未満で急性栄養不良の子どもの人数が5年連続で約300万人おり、2025年にはその数が350万人になることが予想されている。3食に加えておやつまで充分に食べる我が子や自身のサプリメントを、現地に送り届けられたらどんなに良いことか。在庫過多や生産過剰によって破棄される食材や健康食品が届く仕組みがあれば。でも、ただ届けるだけでは支援に依存させてしまうため、人々が自立していくための活動も必要だ。それには長期的な目線で事業を組みたて、資金と人員を確保し………と、今日も同じ壁に直面する。
私たち人道支援従事者が対峙する壁は、凄まじく高く、厚い。壁を壊すためには、1人でも多くの協力者が必要だ。関わり方も、その深さも、それぞれで良い。このブログを読んでくださっている方々を含め、より多くの仲間と共に、立ち向かっていけますように。
執筆者:アフガニスタン担当 守屋 円花