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前回に引き続き、バングラデシュに渡航しているスタッフから届いた出張記をお届けします。
初日、職場からホテルへの帰りはUberを使った。初めてだったため評価モニタリング担当スタッフが同乗してくれた。渋滞にはまり動かない車の中で、これまでオンラインでの打ち合わせしかしていなかった彼と様々な話ができた。
このスタッフが話す中で、繰り返し出てきた言葉が「civilized(教養がある、品が正しい、等)」と「discipline(規律)」だ。「バングラデシュの人たちは日本と違って、civilizedされていないんだ」「息子には規律を守る人間になってほしい」と語る彼は、陸軍学校を出て徹底的に規律を叩き込まれたらしい。物腰柔らかな彼からは想像ができなかった。
バングラデシュの義務教育は、ミャンマーやマダガスカルと並び、5年間と非常に短い。
教育の質も課題とされており、2023年の調査では、小学校3年生と5年生の過半数が学年相当の数学力及びベンガル語力を身に付けていないという結果が出ている。バングラデシュの子どもたちは、学校で何をどのように学んでいるのか。この国の教育システムが、いかに人と社会の形成に影響を及ぼしているのか、まだ私には分からなかった。
この日、普段はバスで通勤するという彼にバスの乗り方を聞くと、同じ区間でも運賃がバスによって変わることがあると教えてくれた。運賃が高いときは過剰請求だと抗議しないのか? と聞くと、「昔は自分もよく口論していた。だけど今はしない。時間の無駄だからね」と答えた。笑いながら話す彼はまだ39歳だ。陸軍学校を出て自由を手にした時、彼がどれだけエネルギッシュな若者だったのか想像する自分がいた。
昨年の2024年7月に起きたダッカでの政変は日本でも大きなニュースになった。ノーベル賞を授賞しバングラデシュのマイクロファイナンスの礎を築いたムハマド・ユヌス氏を筆頭とする暫定政権の擁立をこの時実現させたのは、ほかならぬ大学生たちだ。バングラデシュは、国全体の人口の50%以上を30歳以下の若年層が占める。急激に成長を進めるこの国で、今何が起きているのか。翌週からは首都ダッカを出て地方都市でフィールドに潜り込む。
(執筆:高橋睦美)
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次回のバングラデシュ出張記も、楽しみにお待ちください。