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2月7日の朝、トリニダード・トバゴの漁師たちは見慣れた紺碧の空の下、それぞれが船を出しました。しかし、この日を境に、平穏だったはずの島は、一変してしまいます。
同日、3万5,000バレルもの重油を積んだ船舶が沖合で転覆し、やがてトバゴ沖の岩礁で沈没したのです。
船が深海に沈むと、有毒な原油が大量に流れ出しました。島民たちは、各々の人生において日常的に目にし、共に生きてきた青い海を一夜にして失ってしまったのです。
その代わりに、不気味な黒色の水面を眺めることになりました。地平線まで続く美しかった海は濁り、海洋生態系、野生生物、島の海岸のバランスも破壊されてしまいました。10日の時点で、約15キロの海岸線は真っ黒に染まりました。
2015年9月9日から同国の首相を務め、地質学の博士号持つ火山学者でもあるキース・クリストファー・ローリーは、4日後にこの事態を「国家非常事態」と呼びました。
トリニダード・トバコは、ビーチリゾートが名を馳せ、観光客を集めていました。が、宿泊客の立ち入りを禁止せざるを得なくなりました。
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ADRAは、海を覆い尽くした分厚い油膜を除去する活動を始めました。
スタッフやボランティア、40人以上が有毒ガスの影響を最小限に抑えるために保護具を着用し、4時間交代で、くわ、熊手、シャベルを手に、オイル撤去作業にあたりました。
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スタッフの一人は言いました。
「自分たちや愛する人の生活が脅かされ、島民たちはトラウマを抱えています。でも、力を合わせれば、私たちはこの国と地域社会に有意義な変化をもたらすことができます。」
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5月に入ってから、政府関係者は被害地域における97パーセントの重油が除去され、大幅な進捗が見られると報告しました。
しかし、完全回復までは時間を要します。トリニダード・トバゴの住民が立ち直るには、継続的な警戒と協力が求められます。
私たちはこの危機に対し、思いやりや責任感を忘れない地域福祉、環境保全活動を心掛けました。今後も、当地が活気に満ち溢れていた生態系、そして美しい海岸を取り戻すための継続的な救援を一歩ずつ続けていきます。
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