パラグアイについて
東西2つの顔を持つ国、パラグアイ
パラグアイはブラジル、アルゼンチン、ボリビアと国境を接する南米の内陸国です。国土を縦断するパラグアイ川を境に、多くの河川や湖、深い森が広がる東部と、野生動物の棲み家である広大な平原を有する西部に分かれ、東西で全く異なる特徴を持つ自然豊かな国です。また、世界有数の大豆の生産・輸出量を誇る国でもあります。
パラグアイの課題と住民の健康問題
パラグアイの経済は農業に依存しており、経済基盤が弱いために経済・社会インフラの整備も遅れています。社会の発展や生活の質を測る人間開発指数(HDI)では中南米、カリブ地域の33か国中27位、世界187か国中107位であり、南米地域における最貧国の一つとされています。国内における所得格差も大きく、特に都市部と農村地域との間でその傾向は顕著です。
この格差に不満を感じていた農村地域の人々は、20世紀後半によりよい暮らしを求めて農村部から都市部へ流入しました。特に首都アスンシオン市では、居住地として適していない川辺の地域にまで多数の人々が移民として住みつきました。
これらの地域に住む人々は職を見つけることが難しく、低収入と慢性的な貧困に悩まされています。
こうした地域では栄養分に富んだ食事を取ることが難しく、不衛生な住環境での暮らしを強いられているため、住民は栄養失調や慢性的な病気に悩まされています。
人口:約657万人(2011年 世界銀行)
面積:41万㎢ (日本の約1.1倍)
首都:アスンシオン
言語:スペイン語・グアラニー語
宗教:主にキリスト教
(2013.01.30更新)
事業背景
地域診療所を中心とする新しい保健制度
パラグアイ政府は、2010年より「全国民のためのパラグアイ」と称する社会開発政策を行なっています。公共サービスにアクセスしやすくすることで、国民生活の質の向上と、貧困や不平等の解消、そして経済成長へとつながる環境の整備や社会基盤の強化を目標としています。
保健分野においては、パラグアイの厚生省が2008年から地域住民の生活を支える「家庭保健ユニット」と呼ばれる地域診療所を導入しました。
この新しい取り組みにおいて、各地域に設置された地域診療所は保健分野の拠点となって無償で保健・医療サービスを提供し、低所得者層の公共サービスへのアクセス向上を図るとともに、地域住民の保健状態や衛生環境の改善を目指しています。
貧困と病気に象徴されるアスンシオン市バニャード・スール地区
2つの特徴 ①貧困率50.5% ②病気の蔓延
事業の対象地域であるバニャード・スール地区は、首都アスンシオン市の南西部にあります。パラグアイの統計局によると、国全体の貧困率は34.4%とされています。
首都アスンシオン市の貧困率は13.1%ですが、この地域だけは貧困率が50.5%と極めて高くなっており、国全体の貧困率よりも高い数値となっています。
この地域では子どもの寄生虫感染、下痢、胃腸炎、栄養失調や、大人の高血圧、偏頭痛、下痢といった病気・症状が多く見られます。
中でも、症状の悪化が早く、死亡率も高い急性呼吸器感染症には、この地域の6割の子どもが感染していると考えられています。2008年に家庭保健ユニットの設置が始まるまで、住民の多くは医療費が払えない最寄りの病院への距離が遠いなどの理由から、病気にかかっても適切な診療を受けられないことが頻繁にありました。
家庭保健ユニットによって、以前に比べて多くの住民が医療サービスにアクセスすることができるようになったものの、この取り組みは未だ発展途上であり、サービスの質の向上による地域保健の改善が急務となっています。
(2013.01.30更新)
ADRA Japanの取り組み
事業実施地域:
アスンシオン市バニャード・スール地区
事業目的:
貧困・低収入などの問題から基礎的な保健・医療のケアを十分に受けられなかった住民のための地域保健サービスを改善する。地域保健サービスの利用を促進し、長期的な住民の健康状態の改善につなげる。
事業期間:
2013年1月17日~2014年1月16日
事業概要:
事業実施地域の現状をふまえ、ADRA Japanは首都アスンシオン市のバニャード・スール地区で、住民の健康状態を改善するために地域保健サービスの改善を目的とした活動を行ないます。現在、地域診療所では医師や看護師・助産師などの医療従事者と医療活動を支える保健推進員が活動しています。
しかし、医療従事者が地域保健に関する十分な知識を持っていないことや、保健推進員が定期的な研修を受けることなく活動に従事していることなどから、提供されるサービスの質は低く、ケアを必要とするすべての住民に対して適切な対応はできていません。
このため地域診療所が有効に活用されず、住民の保健・健康状態の向上にもつながらない状態が続いています。この現状を打開するため、本事業では、地域診療所のスタッフを対象に、地域における保健医療に関する知識を高めるための研修を実施し、地域保健サービスの改善に努めます。
加えて、地域住民が主体となった保健活動の活性化と、地域に根付いた活動の継続のため、新たに地域ボランティアを募集・育成します。この地域ボランティアは、保健や医療、衛生などについて地域の住民によりよく知ってもらうために、住民に対するセミナーや戸別訪問を行ないます。事業地の住民自身がボランティアとして主体的に同じ地域の住民に働きかけることにより、住民による住民のための地域保健体制の強化を図ります。
事業内容:
本事業では、以下の活動を行ないます。
1.地域診療所の強化
・診療所の医療従事者に対する研修
・の保健推進員に対する研修
・地域行政関係者・コミュニティリーダーに対する講習
2.地域ボランティアの育成・支援
・地域ボランティアの育成研修
・地域ボランティアによる住民へのセミナーの実施
・戸別訪問
・キャンペーンの実施による啓発活動
(2013.01.30更新)