適切な栄養知識の普及や安全な水の確保など、命を守るための活動がネパールへき地のバルディヤ郡8自治体でスタート
ネパールでは、鉄分が混ざっていたり大腸菌に汚染されていたりする水源をそのまま利用していている家庭が多いほか、健康や栄養に関する基本的な知識を知る機会や、適切な育児アドバイスを受ける環境がないことで、守れる命を守ることが難しい状況が続いています。ネパールで34年の活動歴がある国際NGO・ADRAは、これまでの経験や専門的知識を生かし、日本政府や日本企業の協力のもと、知識の普及や啓発、健康状態の向上に関わる栄養・水・衛生にまつわる環境整備に取り組みます。
認定NPO法人ADRA Japan (アドラ・ジャパン、 所在地:東京都渋⾕区神宮前1-11-1 理事長:柴⽥俊生)は、5歳未満の子どもの発育阻害率が30%(日本の6倍)[1]であるネパールにおいて、環境や周りの大人の意識に由来して子どもが栄養不良に陥らずに済むことを目指し、医療環境や水衛生環境の整備のほか、行政や保健スタッフ、地域住民の知識向上と啓発に取り組みます。
日本の約11倍、子どもが亡くなってしまうネパール
ネパールは南西アジアで最も所得水準の低い国の一つです。人口の17%に当たる490万人が貧困層[2]で、5歳未満の子どもの死亡数は1,000人中28.2人と、日本の約11倍[3]になっています。
5歳未満の乳幼児の30%1が発育阻害の影響を受けており、24%が低体重[4]であるなど、栄養不良に対する予防対策は進んでおらず、大きな課題となっています。
また、人々が生活に利用する水源の71%は大腸菌に汚染されています。国民の17%を占める最貧困層が利用する水源に注目すると、その割合は91%[1]に上ります。
全国の上水道普及率は50%(2020年)[2]であり、そのうち機能している水道は25%のみです。
家庭に手洗い場がある家は約8割ですが、石鹸を使った手洗いを習慣としている世帯は47%[1]にとどまっており、手洗いによって防げる感染症による死亡が多くなっています。
ネパールへき地の状況はさらに深刻
2015年以降、ネパールでは地方分権化が進み、教育や保健プログラムは地方政府に完全に委ねられるようになりました。地方政府は、各自治体にある地域のヘルスポストやコミュニティにあるアウトリーチクリニックと連携し、住民の栄養状態の管理や改善に向けての活動と水衛生の向上を推進していくことになっていますが、年間の活動計画や評価の仕組みづくりに課題があります。
また、実際の活動を担うヘルスポストやアウトリーチクリニックの職員は、住民と向き合いながら、栄養改善や水衛生の改善を進めていくために必要な知識やスキルが不足していると認識しており、乳幼児の栄養状態を確認する成長モニタリングに必要な機器も、十分にそろっていません。
このような背景のもと、2歳未満児の成長モニタリングで低体重と判定された割合は、ネパール全国平均2.9%に対してバルディヤ郡は7.8%と、2.7倍になっています。この数値は全国77郡中ワースト3位[6] です。
また、水衛生に関しても、上水道普及率が全国平均50%に対して7.4%、水栓トイレの普及率も全国平均42%に対して20%と、全国平均を下回っています[1]。
また、バルディヤ郡の90%近い世帯は、地域にある手押しポンプの浅井戸を利用しています。しかし、水質が概して悪く、実際に水質検査をしたところでも、検査をしたすべての水サンプルが、ネパールの水質基準とWHOの水質基準を満たしていませんでした。
取り組む内容
これらの課題に対し、ADRAは、バルディヤ郡の8自治体を含む地方政府と、地域にあるヘルスポストやコミュニティにあるアウトリーチクリニック、女性地域保健ボランティアの方々と共に、バルディヤ郡の住民の栄養状態の改善に取り組みます。また、水衛生委員会の結成をサポートし、浄水装置や高架水槽の設置を含め、水衛生環境の向上に努めます。
具体的な活動内容は、今後ADRAのホームページでも報告してまいります。
この活動には、外務省日本NGO連携無償資金協力のほか、ヤマハ発動機株式会社、公益財団法人テルモ生命科学振興財団および公益財団法人風に立つライオン基金の助成・協力を受けています。また、助成金でカバーしきれない部分については、ADRAにお寄せいただくご寄付を大切に充てさせていただきます。皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
[1] UNICEF,2021, 「世界子供白書2021」,https://www.unicef.or.jp/sowc/pdf/UNICEF_SOWC_2021_table8.pdf
[2] UNDP,2021, “Nepal Multidimensional Poverty Index 2021”, https://www.undp.org/nepal/publications/nepal-multidimensional-poverty-index-2021
[3] Knoema,2023,「ワールド・データ・アトラス」(2023年4月25日取得, https://jp.knoema.com/atlas/ネパール/小児死亡率, https://jp.knoema.com/atlas/日本/小児死亡率)
[4] UNICEF, 2021, “Nutrition”, (2023年4月25日取得, https://www.unicef.org/nepal/nutrition)
[5] UNICEF Nepal, retrieved from https://www.unicef.org/nepal/water-and-sanitation-wash / Department of Water Supply and Sewerage in Nepal, September 2019
[6] Data Atlas of the World
[7] MoH Nepal, 2017
[8] Nepal Map, 2021, (2023年4月25日取得、https://nepalmap.org/profiles/district-09-bardiya/ )
■■■認定NPO法人 アドラ・ジャパンについて■■■
アドラ・ジャパン(ADRA Japan)は、世界中約120ヶ国に支部を持つ世界最大規模の国際NGO、ADRAの日本支部です。各国ADRA支部や国連等のパートナー団体と連携し、「ひとつの命から世界を変える」をモットーに人種・宗教・政治の区別なく、紛争や自然災害の被災地また途上国において、一人ひとりに寄り添い、自立を助ける支援に取り組んでいます。