2023年6月。2日から3日にかけて、茨城県内で1時間に約40mmを超える大雨が降りました。取手市では土砂崩れの発生や653軒の住宅が浸水するなど、被害は甚大でした。
特に双葉地区では601軒が床上・床下浸水となり、多くの住民は普段通りの生活を送ることが困難となりました。
ADRA Japanは、発災後すぐに双葉地区にスタッフを派遣し、他の支援団体や双葉自治会と連携しながら、被災された方々に寄り添う活動に取り組んできました。
① 支援物資の配付とローラー調査
家や車の浸水により、台所が使えない方、買い物に行けない方が多数出ていたため、食料や飲み物、掃除用ぞうきんやブルーシート、ゴミ袋、雨具等を配付し、浸水箇所を乾かすためのサーキュレーターの貸出も行いました。
また、県内の支援団体や双葉自治会と協力して、被災エリアの住宅を訪問し聞き取り調査を行い、詳細な被害を把握したうえで、必要な支援を届けました。
配付した掃除用のぞうきんは、水害に備えてADRAが備蓄していたものです。近年水害が多く発生していることを受け、掃除に使いやすいぞうきんを作る「ちくちくボランティア」の皆さまが縫ってくださいました。
ぞうきんを受け取った住民の方からは
「こんなボランティアがあるんだね。被災するまで考えたことがなかったよ。いろんな人たちがいるんだね。ありがたいよ」
と、感謝の言葉をいただきました。
② 足湯、お茶会の開催
被災した方々は、家の片付けや災害保険の手続きなどやる事が山積みです。
後片づけに追われる中で、少しの時間でもホッとしてもらう時間をもっていただけるように足湯やお茶会も行ないました。
足湯は温泉地でよく見かけますが、被災者支援の一環として行われるものは足をお湯につけるだけでなく、手をさすりながら住民の方々お話を聞く役割もあります。足湯中に、心の内に溜まった心配事や不安などが吐き出されることが少なくありません。足湯によって全身の血行が良くなることで、自律神経が整い良く眠れるという効果もあります。
お茶会は、住民同士が集まって話せる機会として開催しました。団らん中に、水害に関する情報交換やボランティアスタッフに相談できる場になりました。
足湯やお茶会に参加された方の声を一部ご紹介します。
「年齢いくと身体がこわばって大変だぁね。そこへさぁ、避難しろって言われてさ、ボートに乗ってさ、ここで…一晩寝たんだぁ。そしたらさ、枕がないんで身体がいたくて…。ウチに帰ったらすぐ荷物を外に出さなきゃならなくて、身体は痛いわ。やることはいろいろあるわで大変だったわよ」
「つかれた…ヘトヘトだよ。こんなことが起きるなんて思わなかった。初めてのことだからねえ…。本当にヘトヘトだよ。足湯ってこんなに気持ちいいんだね。このまま寝そうだよ」
「わたしなんかより大変な人はいっぱいいるからねえ。でも足湯って気持ちがいいねえ」
足湯やお茶会には、延べ17人のボランティアの方が参加してくださいました。温かいご協力に改めて感謝申し上げます。
③ コミュニティ活動の拠点づくり
当初、ADRAを含む複数の支援団体が活動の拠点としていた自治会館の2階スペースは、本来は地域の方が体操や卓球などのサークル活動を行う場所でした。発災から1か月程が過ぎると、「早く(以前のように)使いたい」という声があがるようになりました。同時に、災害に関する相談ができる場所が今後も恒久的にあるといいという声も聞かれていました。
そこで、地域の方とともに住民の方々が集まれる場づくりに取り組み、もとは小料理屋だった建物を修繕して誕生したのが「地域交流センター つなぐ」です。
「つなぐ」では、足湯やカフェだけではなく、フリーマーケット、鍼灸サロンやクリスマス会など、さまざまなイベントを開催してきました。発災から約10か月後、「つなぐ」の運営は、地元住民の方に引き継がれ、今ではお茶会が毎週開催されています。
それだけでなく、社会福祉協議会から講師を派遣してもらい、防犯や健康に関する講座などを開いているほか、将棋大会、トランプ大会など、地域の方が集まり楽しめるイベントが定期的に開催されており、毎回多くの住民が足を運ぶ場となりました。
「つなぐ」の運営を地元の住民の方へ引継いたときの式典には多くの方が来場し、これまでの支援活動への感謝のお言葉をいただきました。この会では、地域住民の方々による温か手料理が振るまわれ、参加者で賑う、笑い溢れる会となりました。
被災後、お疲れの色を濃くにじませていた地域の皆さんから笑顔が見られるまでなったことは、大変喜ばしい事です。中には、能登半島地震の様子を心配し、活動している私たちに労いの声をかけてくださる方々も多くいました。
これからも「つなぐ」が地域住民が心のより所として集える場所であってほしいと願っています。
取手市での活動はこれで区切りとなります。
災害を乗り越えていく皆さまの姿を間近で見ることができましたことは、私にとっても貴重な体験でした。また、さまざまな形で活動を支えてくださった皆さまにも、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
(執筆:国内事業課 三牧)