6月2日から3日の昼過ぎにかけて、台風2号が西日本から関東までの広範囲を襲いました。
茨城県取手市では1時間に40ミリを超える激しい雨に見舞われ、土砂崩れ、倒木、道路の崩落、住宅の浸水被害などが発生しました。
特に双葉地区では、4日までに民家の浸水被害が600件を超えました。
ADRA Japanは4日に現地の被害情報を可能な限り集め、5日の正午過ぎに現地入りしました。
澄んだ青空が広がり、6月頭にしては日差しの強い日でした。
水害特有の臭いを感じながら車を走らせ、双葉地区を中心に状況を確認して参りました。
まず目に飛び込んできたのは、浸水被害に遭った住民の方々が、家の前で慌ただしく畳や洋服などを積み上げている様子でした。双葉地区は田園風景が続く長閑な土地です。
打撃を受けたエリアは、当地の一部に集中していました。
被害に遭われた団地住まいの女性が、両手に荷物を抱えている姿を目に留めましたので「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけました。70代から80代と思しきおばあさんです。
彼女は、同団地が作られた頃からずっと住んでいらっしゃるとのことです。
「こんなに大きな水害が起こるなんて、信じられないのよ。本当に、どうしたらいいか分からない。自分で畳を運べないので助かるわ」
と語りました。
そこで、ADRAスタッフも、たっぷり水をすった畳を運ぶお手伝いをさせて頂いたのですが、成人男子でも腕に堪える重量でした。
一部屋分の畳5~6枚を、おばあさんと共に家の前まで運びました。一通り片付けのお手伝いをし、次の場所に向かおうとすると、彼女は言いました。
「ありがとう。40年ほどこの団地に住んでいるけれど、こんなことは初めてで……。昨日はトイレが流れなくて大変だったの。一部の人は救助されたけれど、防災無線も聞こえなくて、とても困っていたわ」
おばあさんの髪は汗で湿っていて、整える余裕がないことが見てとれました。
衣類はところどころ汚れており、足元はスリッパでした。作業するには「危ない」と感じざるを得ませんでした。
「週末には子どもが手伝いに来てくれるの。ありがとう」という言葉をいただきました。
その後、被災された他の方のお話を伺い、かつ自治会館で、床をはぐ、壁をはがすなどの技術に長けたNPOの方々と打合せをしました。
ADRAスタッフは、被害にあわれた方々は、片付けに忙殺され、ろくに食事が摂れないだろうから、食料や水など、口にできるものを早急に支援するべきだ、と感じました。
6月5日は21時半くらいまで取手市で活動しましたが、弊団体は、双葉地区の自治会館で茨城NPOセンター・コモンズとともに、住民の方々のサポートをすることを決めました。
複数の企業さんから提供を受けた飲料、レトルト食品等の物資の支援、そして床下を乾かすサーキュレイタ―50台を購入し、技術系団体を通して住民の方々に貸し出すことにしました。
また、6月22日と7月2日には、双葉地区で足湯を行いました。
足湯は、被災したその日から心身ともに休むことができていない住民の方々に、少しでもリラックスしていただけるようにと開催しているもので、東日本大震災の復興支援のときから大切にしている活動です。、
7月2日の足湯にいらした70代の女性は涙をこぼされながら「ありがとう」と、ADRAスタッフの手を握り締めていました。
これからますます暑さが厳しくなる中、被災地域ではまだもとの生活に戻れない現実がもう数か月は続く見込みです。
ほかの地域でも水害が相次いでいますが、私たちにできることを見極めながら、一人ひとりに寄り添って活動するNGOとして、今後も、現場の生の声を汲み上げてまいります。
※この活動は、赤い羽根「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」(ボラサポ)の助成を受けています。
(報告:国内災害チーム 三牧晋之介)