皆さん、こんにちは。
世界各国で紛争は絶えず、エチオピアもその一つです。
この国には近隣諸国の紛争から逃れてきた難民が約92万人暮らしており、世界第9番目の難民受け入れ国となっています。
現在、隣国の南スーダンからエチオピアに流入した難民は約416,000人を数え、そのうち383,611人がガンベラ州内に暮らしています。
ガンベラにもともと住んでいる人口は約467,000人ですので、難民の流入によってほぼ倍になっていることになります。特に同州イタン郡には3つの難民キャンプがあり、約24万人の難民が生活しています。
難民キャンプ開設から10年が経過した今でも故郷への帰還は進まず、難民の数は減少していません。
一方で、国際的な支援額は年々減少しています。教育、食料安全保障、水、衛生、保健、避難施設などの面で多くの課題がある状態が続いていますが、2024年4月10日時点では活動に必要な資金の3.9%しか満たされてないため、届けられる支援が限られてしまっているのが現状です。
そんな中、一人ひとりが自立した生活を手に入れることが重要になっています。
エチオピア政府は数年前より難民に経済活動の権利を認める統合政策をとるなど、難民の人々の定住化を目指しはじめました。
しかし、難民が集中しているガンベラでは、従来、雨水に依存した農業をしているため、雨が降らない乾季は収穫が激減し、食料が不足します。
もともと地域に住んでいる人の食料も足りないところに、難民の流入によって人口が増加し、支援の減少から難民も地域で食料を得なければならず、住民側の負担感は増える一方です。
また、いつかは帰ると思っていた難民が定住するとなると、先行きの不安から、難民との間の緊張が高まるようになっています。
国の財政難や民族間の紛争などの問題も絶えないため、人々の平和的な共存が脅かされています。
そこでADRAは、2024年3月からガンベラ州イタン郡にて、住民と難民がこれから一緒に平和的に暮らしていけることを目指し、農業支援と平和的共存を推進する活動を開始しました。
まず取り組むのが農業支援です。農作物の収穫量をあげ、食料の安定供給を図ろうと、井戸とソーラー式灌漑設備を導入し、農業用地の開拓を通じて農業基盤を整備します。
また、小規模農家が、農業を営むうえで出てくる問題を自ら解決できる力を育むため、農業技術の習得や推進力の向上等にも取り組んでいきます。
また、活動には、ヌエル、ハイランダー、アヌアックなど多民族からの参加を促し、地域住民間の交流と相互理解を促進し、平和的な共存の実現と維持にも同時に取り組みます。
地域住民と難民の平和的共存については、意見を出しやすい場での聞き取りや投票を通して、望ましい状態を図るための指標となる30項目をリスト化し、平和構築に役立てていきます。
加えて、難民と地域住民間の治安や争い事の解決方法、共存の重要性など平和に関する対話を行い、地域共通の価値観を見出せる施策を進めます。
大人、子ども、民族の違い、障がいの有無、移動できるかできないか、性別、年齢など、あらゆる人々が、それぞれの違いや壁を越えて活動に参加できるよう配慮し、平和なコミュニティが作られるようサポートしていきます。
困難も多くありますが、人々の尊厳が守られた平和な社会を目指す活動を継続するため、エチオピアに駐在員を置き、安全管理を徹底して、人々と共に活動してまいります。
これらの活動は、皆さまからの温かいご支援と、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。このような活動ができますことを、心から感謝申し上げます。
執筆:エチオピア事業本部担当 小松 洋