2022年度ガンベラ事業報告。難民支援の在り方を考える。

支援者のみなさま、エチオピアからこんにちは。

駐在担当の辻本です。

今回は、エチオピアのガンベラ州にあるクレ難民キャンプで行った水衛生支援活動についてご報告いたします。

南スーダンからの難民が多く住むガンベラでは、支援団体の活動資金が減少傾向にあります。これは、難民危機から時間が経ったこと、新たに発生した他の国の事象によって南スーダン難民への注目度が下がったこと、南スーダン国外に逃れている難民よりも帰還民への支援が行われるようになったことなどが要因となり、寄付金や国際機関からの資金拠出が減っているためです。そんな中、難民生活は長期化する傾向にあり、自立を促す支援の重要性が増しています。

そのため、ADRAを含むガンベラにて活動を実施している支援団体では、難民の自立に向けたサポートを目指す活動に取り組んでいます。 

ADRAでは難民の自立を促すため、これまで難民のトイレ建設能力の向上を目指すことに加え、難民自身が身の周りの物を使ってトイレを建設できる方法を広めていくことにも力をいれました。

トイレ建設研修はガンベラにあるクレ難民キャンプ在住の50世帯を対象にし、建設指導員のサポートのもと、トイレの建設方法を身につけました。クレ難民キャンプで活動する他のNGOが難民自身のトイレ建設を働きかけていたことも相まって、研修へ参加する難民の方々の姿勢は前回の活動のときより積極的になっていました。

またトイレ建設技術の普及のために啓発活動も行い、トイレ建設研修を受けていない難民の世帯にも働きかけました。

その結果、支援団体の直接的なサポートを受けていない世帯もトイレを作り始め、事業終了時には難民の方々自身が建設したトイレが150基以上確認できました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や他の支援団体もこの流れを高く評価してくださり、難民の方々の自立に向けた活動として強く奨励しています。


難民が作ったトイレ。伝統家屋とデザインが似ており、建設資材には枝、草、泥などが使われている。

トイレの建設技術研修のほか、手洗いなどの衛生習慣を改善するための啓発活動にも取り組みました。クレ難民キャンプには2021年から2022年の間に約5,000人もの難民が新たに流入したため、新たな難民の居住エリアで集中的に啓発を実施し、衛生知識・習慣の向上を目指して以下の活動を実施しました。

・貯水用ポリタンクの洗浄を促す「水容器洗浄キャンペーン」

・道や広場などの公共スペースを共同で清掃する「環境キャンペーン」

・正しい手洗いの方法を広める「手洗いキャンペーン」

・各世帯の訪問を通した衛生知識の普及活動

・石鹸の代替品として手洗いのときに灰を使用することの啓発(灰もアルカリ性なので石鹸と同じような洗浄効果があります)

難民キャンプ内では衛生用品も配給されますが、洗濯や入浴でも使用する石鹸は不足しがちです。そのため、支援物資が不足する中で代替品を活用して衛生的な習慣を続けられるように啓発しました。

手洗いキャンペーンの様子

また、クレ難民キャンプにある5つの小中学校には生徒によって結成された水衛生クラブがあります。

研修などを行ってこの活動を支援し、子どもたちの適切な衛生知識・習慣の向上を行いました。

水衛生クラブ児童が衛生知識・習慣について学ぶ様子。

ADRAは2014年からガンベラ州の難民キャンプで水衛生の分野で活動を続けてきました。大規模な難民の流入から9年が経ちましたが、南スーダンにおける治安への不安などから南スーダンへの難民の帰還はなかなか進みません。 

そのような中、エチオピアでは難民に対して国民と同じように、就労や教育、銀行口座の開設、運転免許の取得といった権利を認める統合政策が徐々に進められました。

紛争直後の混乱した状況から避難生活が長期化して生活が落ち着く中で、危機直後の供与を軸にした支援の形から変えていく必要性がでてきています。エチオピアで続いている急激な物価高騰、国際支援の減少、難民生活の長期化、それを受け入れる現地の課題などに対応できるよう、あるべき活動の在り方と共に、引き続き現地に寄り添って活動していきます。

今後とも皆さまからの温かいご支援を何卒よろしくお願いします。

(執筆:エチオピア駐在員 辻本 峻平)

*エチオピアでの事業はジャパン・プラットフォームによる助成金と支援者の皆様からの寄付金で実施しています。


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