こんにちは。
エチオピア駐在員の辻本です。
エチオピアからのブログ更新がご無沙汰となってしまいました。
現在のエチオピアは、治安が不安定になったり、世界中で続いている物価高騰の影響を受けたりと、支援活動をする中で壁が多く、頭を悩ませることが多いです。
例えば2021年から2022年の間では食料や燃料、木材、水、セメント、釘など、あらゆる価格が2倍以上に跳ね上がっています。トイレの建設を進めている活動では、資材が高騰すると、限られた資金の中で作れるトイレの数が減ってしまうため、現地スタッフや日本にいるスタッフと知恵を出し合いながら支援活動に取り組んでいます。
今回のブログでは、エチオピアが国際的な支援を必要とする状態になっている3つの要因にフォーカスして、今、エチオピアで何が起きているのか、ご紹介していきます。
エチオピアにおける民族対立と干ばつ被害、そして避難してくる難民
1)民族対立
まず、民族対立についてです。エチオピアは80を超える民族が存在する多民族国家であるため、公平で平等な政治参加を保証するため民族連邦制と呼ばれる政治体制をとっています。
しかし、それが裏目に出て、異なる民族同士の関係性に火がつくことがたくさんあり、多くの傷跡を残しています。土地の所有権をめぐる争いが過激化し武力衝突につながることもあり、治安が安定しない要因にもなっています 。エチオピアの平和はこの「民族問題」を解決できるかどうかにかかっていると言っても過言ではないと思います。
実際、エチオピア北部で2020年11月から激化した紛争やエチオピア中西部オロミア州の武装勢力の活発化も民族問題の影響を大きく受けています。
北部では2022年11月に和平協定が結ばれたことにより、落ち着きが取り戻されつつありましたが、最近、アムハラ州では中央政府による州軍解体に反対する運動が起きたため、治安が悪くなり、死者がでるまでに至りました。また、オロミア州では武装勢力の活動が今も活発で、人々の平穏な生活が脅かされています。 紛争は略奪、家畜や農地への攻撃、学校や医療機関、基礎インフラの破壊など物理的な被害だけでなく、虐殺・レイプなど身体的・心理的被害を与えたりと、様々な面で大きな傷跡を残すことがあります。そうした理由から避難した方々のために、広範で適切な支援が必要となっています。
2) 深刻な干ばつ被害
次に、干ばつ被害についてです。干ばつとは、長い間雨が降らずに、土地が干上がってしまい、深刻な食料不足を起こす災害です。山火事も起こりやすくなり、砂漠化の原因にもなります。エチオピアは今、この40年で最悪と も言われる干ばつの影響を受けており、約1200万人の人々が十分な食料を得ることができず、生きていくのが難しい状況に陥り、緊急人道支援を必要としています。
3) エチオピアに流入する難民
最後に、エチオピアに流れてくる難民についてです。エチオピアは南スーダン、ソマリア、エリトリア、スーダン、イエメンといった近隣国から難民を受け入れており、その数はアフリカで3番目に多い約90万人(2023年3月末時点)となっています。その内、約半分を占めるのが南スーダン難民で、ほとんどの南スーダン難民はADRAが活動しているエチオピア西部のガンベラ州にある難民キャンプで生活をしています。彼らはほとんど何ももたずに南スーダンより避難してきたため、住居やトイレ、食べ物、水などあらゆる支援を必要としています。また、難民キャンプが長期化する中、難民が国際支援に頼らずに済み、より自立した生活を送れるように支援の形を工夫していくことも重要な課題と言えます。
ADRAの取り組み。それぞれに寄り添う支援を
このような中、ADRAは行政や国連、国際支援機関と支援の調整をした上で、人々に必要な支援活動を続けています。
1)民族対立の影響を受けた地域の復興にむけて
2022年11月から、北部にあるアムハラ州で、復興を支援するために水衛生事業を開始しました。具体的には、紛争により壊れた給水設備や学校トイレの修繕、国内避難民キャンプでの緊急トイレ建設のほか、衛生的に暮らすために必要な衛生用品(ポリタンク、洗面器、バケツ、石鹸、生理用ナプキン)を配付したいます。また、郡の保健普及員や保健専門家への衛生啓発研修を行い、住民や避難民への衛生啓発 に取り組んでいます。
2)干ばつ被災者への支援
食料危機に関しては、今年の2月から干ばつの影響を大きく受けているソマリ州で、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)と食料、栄養、保健、水衛生、農業の5つの分野にわたって支援をスタートしています。
3)難民支援
エチオピアに流入する南スーダン難民支援を2014年から継続しています。ガンベラ州クレにある南スーダン難民キャンプでは、ADRAが水衛生に関する支援を担当しています。
最近の活動では難民の方が、自分たちでトイレを作っていけるように建設方法の研修に取り組み、50人に技術を伝えることができました。また、難民キャンプ内において衛生啓発活動を行い、特に新しく難民として登録された方々や学校の生徒が衛生に関する知識を高められるような取り組みをしています。
日本ではあまり報道されることがなく、エチオピアのことを知る機会が少ないかと思います。私はエチオピアにおいて支援活動をする者として、たくさんの方に知っていただけるように、これからもエチオピアの情報と支援活動状況を定期的に発信していきたく思います。
今後とも皆さまからの温かいご支援を何卒よろしくお願いします。
(執筆:エチオピア駐在員 辻本)
*エチオピアでは皆さまからの寄付金とジャパン・プラットフォームによる助成によって支援活動を実施しています。