
現在、ADRA Japanではエチオピアで灌漑による生計向上と平和的共存促進のプロジェクトを進めています。後者の活動では大規模な住民集会も開催しているのですが、現地からのレポートを見ると、いつも目に留まるものがあります。女性達の服装です。
プロジェクトの実施地は南スーダンと国境を接する、エチオピア西部のガンベラ州です。都市化している首都のアディスアベバに比べて、ガンベラの町ではカラフルな民族衣装を身に着けた女性が目立ちます。「洋服」ではなく「ドレス」と呼びたくなるような装飾的なデザイン。使われている布地は緑、黄色、赤、オレンジ、紫等、はっきりとした明るい色が多く、ヘッドピースと合わせて、いわゆる「柄・オン・柄」のコーディネートも散見されます。いずれも高い美意識が感じとれ、光彩奪目の光景です。
平和的共存促進は「エブリデー・ピース(日常的平和)」と呼ばれる考え方に基づいて行われています。国際社会や国家によるトップダウン型の政策を通じてではなく、地域のコミュニティーが主体的に「自分たちにとっての平和とは何か」の指標を作成し、その値を高めることを目標に地域活動を実施することで、土地に根差した平和を築いていこうという考え方です。
ガンベラにはヌエル、アヌアック、ハイランダーに代表される複数の民族が生活しています。これまでのガンベラでの武力衝突は、私たちが「紛争」と聞いて想像するような政治的抗争ではなく、個人的な殺人等を契機とする民族感情の高まりが起因となって発生しました。ミクロな犯罪が武力衝突に発展することを防ぐためには、若者や女性、障がい者等、多様な住人が関わり、地域全体が平和な暮らしを目指すことが不可欠です。
女性たちが縫うカラフルな洋服でいっぱいの会場はそうしたエチオピアの未来に向けたスタート地点です。集まってくれた女性たちが地域に「花を添える」のではなく、この土地の主体として平和の花を咲かせてくれることを願うばかりです。
(執筆:市川結理)