インターンの柳澤です。
1月28日、避難を続けている富岡高校のサテライト校で、2年半以上続けてきたアメリカの学生との最後のスカイプ交流が行なわれました。アメリカの学生から震災後初めて故郷に足を踏み入れた感想を聞かれ、生徒が答えるという場面もありました。生徒たちの生の声には、多感な時期に震災を経験した重みを感じました。
ADRA Japanでは東日本大震災復興支援の一環として、2012年6月から福島県で県内の若者に向けた人材育成プログラムに取り組んでいます。
そのうちの一つが2013年5月から行なっている福島県立富岡高等学校いわき明星大学サテライト校と米カリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院(以下IR/PS)の学生とのスカイプを通じた交流です。
*スカイプとは、音声電話、テレビ電話、文字によるチャットが無料でできるインターネット電話サービスのことです。
元々富岡高校があった双葉郡富岡町は福島第一原発から近く、今も立ち入りが制限されています。そのため、富岡高校の生徒は所属するコース別に4箇所のサテライト校に分かれて通学していました。いわき市の富岡高校いわき明星大学サテライト校では福祉健康コースの3年生6名が通っていました。このサテライト校舎は今年度で閉校になることが決まっており、この6名の生徒にとって1月28日は最後の授業の日でした。
この日の英語の最後の授業では、アメリカの大学院生とのスカイプ交流が行なわれました。自己紹介から始まり、お互いの町の良いところなどを聞きあっていました。恥ずかしそうに話していた生徒もいましたが、自分から積極的に大学生に質問したりする生徒も見られ、日米間で会話が弾んでいました。
このサテライト校では、去年の夏から3年生全員で「福島プロジェクト~私たちの故郷」と題し、彼らのふるさとについての動画を制作してきました。生徒2人は動画を制作する際、震災後初めて故郷に足を踏み入れたそうです。大学生から故郷に帰った感想を聞かれた生徒は「今まで震災の被害から目を背けてきたところがあった。動画を作ったのはいい機会だった」と答えていました。
生徒にとってはこの日が最後の授業だったこともあり、担任の先生から大学生に、富岡高校の生徒のためにこれからのアドバイスをお願いしたりする場面もありました。大学生からは「夢に向かって頑張ってほしい」「他人と比べない」「旅をして新しい場所に行くと自分のところの魅力も再認識できる」などといったアドバイスをもらいました。また、アメリカ側の先生からも、どれだけかかっても夢を叶えるのを諦めない大切さなども教わりました。
多感な時期に震災が起き、友達とも離れ離れになり、学校も変わり、想像もできないような大きな変化だったと思います。中高生という大事な時期にこのような想像を絶する経験をしてきたからこそ、生徒の言葉に重みを感じました。だからこそ、再び故郷に足を踏み入れる勇気がでたというのは大きな一歩ではないかと思います。
このスカイプ交流で太平洋を越えたところに福島のことを気にかけてくれる仲間がいたということは生徒たちにとっても励みであり、また楽しみだったのではないでしょうか。この交流をきっかけに国内のみならず、海外にも目を向け、可能性を広げていってほしいと思います。
3月1日に卒業式を終え、生徒たちにとっても、先生たちにとってもまたこれから大きな生活の変化が待っています。県内に留まる人、県外に出る人、進学する生徒、就職する生徒・・・それぞれの生活の中で、遠くても福島のことを思ってくれる仲間がいることを忘れずに、前向きに歩んで行ってほしいと思います。
(執筆:インターン 柳澤ちさと)