スタッフのつぶやき– category –
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当たり前の幸せ
午前5時過ぎくらいだっただろうか。別室で寝ている家族を起こさないように、私は静かに身支度を始めた。泊めてもらった部屋の小窓から朝陽が差し込み、鳥のさえずりが耳に優しく届く。洗面台がないので、庭先で歯磨きを済ませ、バケツに汲んでもらった水... -
「小さなお客さん」~スマホに保存されている写真~
気付けばこの地に足を踏み入れてから、一年が過ぎていた。毎日多くのボランティアや住民で賑わっていたADRAの事務所も落ち着きを取り戻し、今では1日に数人が訪れる程度になっている。穴水駅前の状況も大きく変わった。倒壊しかけていた家屋も解体が進み... -
再び青空を見上げる方法
これは小学生の娘が書いた絵です。 娘はアート教室に通っています。教室はその週によってテーマが設けられ、絵画の週もあれば立体製作の週もあり、「絵画」といってもいろいろな技法を教えてもらったうえで、各自製作に取り組みます。娘がこの絵を仕上げ... -
どこかで誰かのためになる
「バホンッ」。 何かが破裂したかのような音と共に、大きくハンドルが左右に取られる。サイドミラーには、黒い板状の何かが転がっていた。運転席のディスプレイには、見慣れない警告灯。 「ああ、やってしまったな。明日からどうしよう」。 冷や汗をかきな... -
1年前の能登で目にした「覚悟」
能登半島の中心地、七尾。 東京と比べると質素な都会ではあるが、ここは確かに奥能登と中能登を合わせても、随一の都市なのだ。 「能登はやさしや、土までも」元禄9年に西山郷史が生んだ言葉である。それから現代まで、この地域に住む人々の気質を表す言葉... -
4輪のシンボルマークを背負って活動する彼女たち
西ネパールのバルディヤ郡は、栄養状態や水衛生環境に関連する指標が全国平均を下回り、改善が必要なエリアであった。ADRAはこの地域で3年間の健康改善事業に取り組み始め、現在2年目が終わりを迎えようとしている。活動の中で、住民の栄養や水衛生に関す... -
小さな行いが、大きな力に ― ADRAで働いて感じること
ADRA Japanの一週間は、全体ミーティングとお祈りで始まります。クリスチャンのスタッフはもちろん、そうでない者も一緒になって、牧師である支部長の言葉に耳を傾けます。紛争や災害、貧困下にある人達に思いを馳せ、駐在で外国や被災地に入るメンバーの... -
私=私
「今、この瞬間に大切なこと」について、文章を書くことになった。 真っ先に浮かぶのは、子ども達。今朝から熱を出して保育園を休み、1日中読書と睡眠を繰り返す娘。そして、今頃保育園でおやつを食べている息子。世の中の殆どの親同様、私の生活の中心は... -
飛花落葉
青く澄み渡った空にところどころ低く浮かぶわた雲。私は自転車をこぎながら、手をのばせばつかめそうな気さえして、空に見とれていたが、ふと地面に注意を払わないといけないことを思い出す。黄土色の硬く固まった土の道路は穴ぼこだらけで、うっかりする... -
サプリの向こうに見る世界
ある日、スマホに保存された写真の一覧を見ていたら、英語で書かれたボトルが映っていた。Magnesium Glycinate。日本語で「グリシン酸マグネシウム」。日常的に摂っているサプリメントで、飲み切ってしまったため注文しようと思い、忘備録として撮影したも... -
私の一枚 葉書
年季の入った木製のカウンターの小窓越しに、ヘナでオレンジ色に爪を染めた郵便局員のおじさんの手が動く。切手を貼るスペースを確認した後、「一枚10タカだよ」と彼は言った。バングラデシュでポストカードを手に入れて、ついに発送するこの日まで1か月... -
私の一枚/お正月の母の味
昆布巻き、黒豆、なます、栗きんとん、伊達巻、レンコン、田作り…。2025年を迎えた食卓の、半月盆に所狭しと並べられたいつものお正月料理だ。年末から母がそのほとんどを手作りする。 母の負担を少しでも減らせたらと、今年はなますと栗きんとんを作った... -
バングラデシュ出張記 #6「生きる」ということ
バングラデシュ北西部、インドとの国境に近いディナジプール市ビラル管区での調査5日目。モンスーンが終わり、冬がこれから始まろうとしている10月後半。もちろん日本の秋冬のような気候ではなく、気温は日中30度を超え、湿度のおかげで体感温度も上がる... -
バングラデシュ出張記 #5「Civilized country」
初日、職場からホテルへの帰りはUberを使った。初めてだったため評価モニタリング担当スタッフが同乗してくれた。渋滞にはまり動かない車の中で、これまでオンラインでの打ち合わせしかしていなかった彼と様々な話ができた。 このスタッフが話す中で、繰り... -
地球の裏側の同僚たちと
パソコンのスクリーンの上で、ひとりでに英語の文章ができあがっています。 「The schedule of the drilling will be…」(掘削スケジュールは…) 少し打ち込むと、カーソルが戻ってスペリングを直し、また文頭に戻って…パソコン越しにタン、タタンとキーボ... -
目玉の価値
町には“それ”が溢れている。 服やカバン、ビルの屋上、はたまたスマートフォンの裏にも描かれている。 私たちは特に意識していなくても、見ただけでそれがどこの企業が作った物か知っている。 ロゴには力がある。 製造メーカーとしての認知だけではなく、... -
能登半島地震から1年
能登半島地震から一年を迎えるにあたり、犠牲となられた方々に対し心より哀悼の意を表すと共に、被災されたすべての皆さまに、改めてお見舞いを申し上げます。 「あの日が近づくと落ち着かなくてね」 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県山元町の住民... -
「温まるよね。本当に美味しい。」
富山県と石川県の県境近くにある長さ957mのトンネル。それを抜けるまでの青く澄んだ空色が嘘だったかのように、冷たい強風に吹かれた雪が激しく乱れ飛んでいる。 石川県七尾市内にあるコミュニティセンターの玄関前。トンネルを抜けてからこここまでの間、...