東京都調布市にある桐朋女子中学校にて、「専門家とのコミュニケーション~海外と日本の支援活動~」と題した講話を担当しました。とてもきれいな学校で、教室はひな壇のようになっており、生徒一人ひとりの顔がよく見える中で、お話をさせていただきました。
まず、ADRAがどのような団体であるか、どこでどんな支援に取り組んでいるかをお伝えしたあと、2023年の茨城県取手市の洪水や、2024年1月1日に起きた能登半島地震の対応について詳しく伝え、防災・減災についても考えてもらう時間も持ちました。
日本の災害被災地の話をしているときには、水害が起こったらどうなるか、地震が起こったらどうなるか、自分ごとに置き換えながら熱心に話を聞く姿勢があり、自分たちも備えようという気づきや、できることをしたいという思いにつながったようです。
講話の後半では、学校がある地域の洪水ハザードマップを用いて、災害が発生した時に自分がどういう行動をとるのか、時間の経過も踏まえて想像することで災害に備える「タイムライン」というワークに取り組みました。
「タイムライン」は、組織単位で作る場合もあるものですが、今回は、一人ひとりのタイムラインの作成を一部体験してもらうことを目的に、いくつかの質問を投げかけ、そのとき自分がどうするかを考えてもらいました。
今回は、おうちの人と多摩川の近くに出かけていたという想定で、雨が強くなってきたと思っていたら、みるみるうちに豪雨になり、長時間このまま強い雨が続くという情報が入ってきた」という状況設定をしたうえで、以下、2つの質問をしました。
1.そのときあなたはどう行動しますか?
2.「(地図上にある)第ニ小学校に避難することに家族で決めた」と想定。みんな歩きで来ていた。乗り物はない。「あとこれだけ買ってから」などやりながら避難途中であった(水色のエリア)。そこに「多摩川が決壊した」という情報が入ってきた。どう行動しますか?
生徒からは、「家に猫がいるので、まず家に帰る。猫が家のどこにいるかを確認して、ゲージに入れて逃げられる準備をする。お母さんがいなければLINEで相談する」という答えや「第二小学校につく前に、高い所に逃げる」という答えが上がりました。
この回答を受けて、災害時には、ペットをどうするかという問題は大きいことなので、事前に考えておくことが必要であることや、災害時には最初に決めた目標の地点にこだわらないで、高い所や遠い所に逃げる判断は大切であることを伝えることができました。
また、災害の対応にはお墨付きはないが、戻って亡くなってしまった人もいるので絶対に戻らないことや、東北地域の「津波てんでんこ」(集まったり戻ったりしているうちに命を落としてしまうから、バラバラでいいからとにかく逃げろ)という昔から伝わっている言葉があることも紹介しました。
講話の最後には、たくさんの質問がありました。
「どうしたら私たち子どもでも、戦争や災害にあった人たちの力になることができますか?」「この活動をして自分自身が変わったことは何ですか?」「どのような思いをもって活動に取り組んでいますか?」など、自分事として捉えていなければ出てこないような質問も多くありました。ひとつひとつ、真摯に答えさせていただきました。
先生からは、「お話を聞いたことをこれで終わらせるのはもったいないと思う。私たちにできることを考えて、お話聞いたこと、質問して聞いたことを、行動につなげていきましょう」という呼びかけがあり、大きくうなずく生徒たちの姿が印象的でした。
海外で活動地の話や、日本の災害被災地での支援活動の話は、生徒の皆さんにとって初めて聞くことも多かったようで、あとから届いた感想には、驚きや気づきの声が多くありました。また、たくさんの応援のメッセージや、自分たちにできることをしたいという前向きな言葉がたくさんありました。
中学生でもできることたくさんあるので、これからも考えてもらいたいと思っています。感想と合わせて、追加の質問も届きました。高い関心をもってもらえたことをとても嬉しく思います。
講話に呼んでくださった桐朋女子中学校の皆さま、ありがとうございました。
また次の機会を楽しみにしています。