ケニア/干ばつ対応力強化事業(水 衛生設備・衛生改善・食糧確保)

ケニア事業背景|慢性化している水不足

ケニアが位置するアフリカ東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域は、気候変動の影響から降雨量が減少し、干ばつが頻発しています。2011年には、過去60年間で最悪の干ばつが起き、深刻な食糧危機が発生しました。

食糧危機においては、干ばつ被災者に水や食糧を配布することも必要ですが、今後も起こりうる干ばつ・水不足を生き抜く力を住民自身が身に付けられるような手助けも必要です。半乾燥地帯に属するケニア共和国東部州キツイ県ムインギ中央郡では、多くの住民は、

岩のくぼみなどに溜まった雨水や、枯れてしまった季節河川を掘り起こして地下から湧いてくる水などの水を利用しています。

季節によって枯れてしまう季節河川。むき出しになった川底を掘って水をくむ。毎日掘るため、穴はどんどん深くなる。

水のたまるくぼみのある岩やむき出しの川底は、たいてい居住地から離れたところにあり、近い場合でも歩いて1時間はかかります。その上、家畜も同じ水源を直接利用するため汚物が混ざりやすく、不衛生になりがちです。水を得られる方法が限られていることに加え、適切な衛生習慣や衛生設備がないため、地域の住民の間では、下痢症、腸チフス、赤痢などが発生しています。

ロバを使った水汲み作業

この地域の人口の大半を占めるカンバ人は、農業と牧畜により生計を立てています。生活に水は欠かせませんが、この地域では灌漑技術が発達していないため、雨に依存した生活となっています。そのため、雨の不足が農作物の収穫や家畜の生存に大きく影響を及ぼします。

2011年の干ばつでは、農作物は枯れ、家畜も倒れ、住民の食事の回数は1日1回にまで減る深刻な食糧危機に陥り、「緊急事態」地域と指定されるほどでした。

このような干ばつを生き抜くためには、飲み水や生活用水をできるだけ多様な水源から確保することや、水を煮沸消毒するなどの基本的な公衆衛生に関する知識を身に付けること、自給できる農作物の生産量や種類を増やすことが大切です。

井戸の掘削
給水所の設置
村落保健普及員の研修

干ばつを生き抜くための活動 その1|水と衛生

深井戸を掘削し、年間を通して常に水を供給できる給水設備を設置しています。また井戸を管理する水管理委員会を設立し、住民の力で井戸を維持できるよう、必要な研修を行なっています。

さらに、地域の様々な水源管理者から成るネットワークを設立し、地域全体の水源の利用と管理方法や、水に関連する紛争解決の方法などを学ぶ機会を提供しています。公衆衛生に関する研修を受けた村落保健普及員は、

適切な水の保管方法や浄化方法のほか、トイレ使用や手洗いが習慣化するよう家庭訪問に取り組み、水管理委員会と小学校の先生は、井戸に水を汲みに来た住民や授業の中で衛生教育に取り組んでいます。

干ばつを生き抜くための活動 その2|食糧確保

女性グループの代表者に対し、少量の水で野菜を育てることのできる麻袋農法の指導をし、種子を配布しています。

また、女性グループの代表者たちは学んだ農法を普及しています。水管理委員会のメンバーに対しては、共同菜園の運営に関する研修を行なっています。水管理委員会は井戸の隣に共同菜園を開墾し、井戸の水を利用して野菜を栽培しています。この活動は、井戸に水を汲みにきた住民たちが共同菜園を見て農業に対する興味と意欲を持たせ、地域の食糧自給の増加につながっています。

井戸の近隣にある小学校の先生に対して、学校菜園の運営に関する研修を行なっています。先生と保護者が協力して学校菜園を開墾し、生徒たちも課外活動の一環として菜園で野菜の栽培を行ないます。給食のない小学校の生徒たちは、菜園で採れる野菜を食べることができ、これが生徒たちの栄養改善に繋がります。

同地区の5歳児未満の子どもの約1割は栄養が足りていません(2013年3月の調査)。干ばつに強い穀物や農作物を栽培することや、乾燥地帯に適した農業技術を普及させることで、持続的で自然災害に影響されにくい食糧の確保が可能となります。井戸の近隣にある小学校の先生に対して、学校菜園の運営に関する研修を行なっています。

先生と保護者が協力して学校菜園を開墾し、生徒たちも課外活動の一環として菜園で野菜の栽培を行ないます。給食のない小学校の生徒たちは、菜園で採れる野菜を食べることができ、これが生徒たちの栄養改善に繋がります。同地区の5歳児未満の子どもの約1割は栄養が足りていません(2013年3月の調査)。

干ばつに強い穀物や農作物を栽培することや、乾燥地帯に適した農業技術を普及させることで、持続的で自然災害に影響されにくい食糧の確保が可能となります。

共同菜園の開墾 
麻袋農法で育った野菜
学校菜園

事業概要

事業地:東部州ムインギ中央県

事業目的:干ばつ対応力の強化を目指し、深井戸を掘削し給水所を建設するほか、井戸の管理に関する研修、村落保健普及員への公衆衛生研修、節水農法や共同農園の維持管理に関する研修を行なう。

事業期間:2012年9月~継続

助成金:ジャパン・プラットフォーム (2013年6月1日~2013年9月30日)

事業担当スタッフより

大干ばつが起こった地域はとても広く、まだ対応が追い付いていません。井戸を掘るだけではなく、食糧の自給までを視野に入れたこの活動は多くの方に喜んでいただける活動です。

これまでの活動

2011年の大干ばつの際、ADRAはネットワークを生かして緊急支援を行ないました

ADRA JapanはADRAソマリアが実施した食糧・生活用品の配布、給水車による水の配給、

井戸や貯水施設の修理・新設等の支援活動のための資金援助を行ないました。

これらの活動については以下のブログをご覧ください。

【緊急】東アフリカ 干ばつ被災者支援

【緊急】東アフリカ 干ばつ被災者支援 Vol.2

【緊急】東アフリカ 干ばつ被災者支援 Vol.3

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