こんにちは。エチオピア駐在員の羽鳥です。
ADRA Japanはエチオピアに住む南スーダン難民への支援を行っています。
南スーダンとの国境にあるガンベラ州のクレ難民キャンプで、各世帯用のトイレの建設と衛生啓発活動を行っています。
2014年から続けているこの事業ですが、2020年度はエチオピア政府やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からの活動許可の取得に時間がかかり、年明けから本格的な活動を開始しています。
ガンベラ州には7つの難民キャンプがありますが、難民キャンプでは下水道が整備されていません。
そのため、もちろんトイレは水洗式ではなく、ピットラトリンと呼ばれる簡易式トイレを作っています。
今回は、事業の進捗とトイレのつくり方を紹介します。
まず、トイレの穴を掘ります。直径は80㎝、深さは2.5mのサイズが基準になります。
この作業は、トイレを使用する難民自身で行ってもらいます。
作業に参加し、自分で使うトイレを自分で作ることで、完成後のトイレをより大切に使うようになるからです。
実際に、過去にはトイレを引き渡したあとにトイレを解体して資材を売ったり、ほかの用途に使ったりする人がいました。
自ら建設に携わったトイレに愛着を持ってもらい、長く大切に使ってもらえるように工夫をしています。
次に、完成したトイレ穴にスラブ(穴の開いたコンクリート製の円形の板)を置きます。
これがトイレの土台となります。
この土台に合わせてトイレを囲う壁を作ります。さらに屋根とドアを設置して完成します。
これまで、事業で設置する世帯別トイレの壁には鉄製のトタンを使用していましたが、今回の事業ではコンクリートブロックと竹を使用することになりました。
鉄製のトタンは市場価値が高く、転売や窃盗されてしまうリスクがありました。
また、竹を使用することで、トイレが損傷したときに自分たちで壁の一部を取り換えたり、修理することができる利点もあります。
完成のタイミングで、施錠のための南京錠、清掃用のブラシ、手洗い用の水をためるポリタンクと石鹸も配布しています。
こういった道具を配布することも、安全に、清潔に、できるだけ長く使われるようにする取り組みのひとつです。
スラブの製作や壁・屋根の建設は難民を雇用して行います。
難民としてエチオピアに移住する前に、南スーダンで建設業などの経験がある人を雇います。
建設作業の経験をさらに積むことができ、収入にもなります。
ガンベラの難民キャンプではこのように、援助団体からの仕事を請け負っている難民が多数います。
医療や教育といった知識や経験を生かしている人、警備員や荷下ろしなどの労働をする人、事務作業を行う人もいます。
また、難民キャンプの近くに住むエチオピア人で、難民キャンプ内の援助団体の職員として働く人もいます。
ADRAの事業で働いている難民の人たちは、建設作業員のほかに、衛生啓発員、コミュニティ動員者、清掃員、警備員などがいます。
ADRA はこうした人々に対し、定期的に研修を行い、基本的な知識の確認やアップデートを行っています。
2月から、現地ではトイレの穴掘りとスラブの製造を本格的に開始しました。
受益者の人々は、研修を受けたコミュニティ動員者の指導・サポートのもとで、安全に配慮しながら作業を進めています。
トイレ穴の大きさの指導はもちろん、掘削中の穴に人や家畜が落ちないように対策をしたり、児童労働が起こらないように確認したりと様々な面からサポートしています。
このトイレ穴を掘る作業は1週間から2週間かかります。
ガンベラの気温は年間を通して高く、35度から40度になります。
その中で作業することは大変ですが、受益者やスタッフの体調にも気を遣いながら活動していきます。
これから、スラブの設置、そして壁や天井の設置を行っていきます。
安全に、受益者と協力して、スタッフ一同活動してまいります。
引き続き、皆さまの温かい応援をよろしくお願いいたします。
*本事業は皆様からのご支援とジャパン・プラットフォームの助成金で実施しています。
(執筆:エチオピア事業担当 羽鳥憲伍)