2月にウクライナ危機が始まって以来、9ヵ月以上が経ちますが、いまだ空爆が収まらず今もなお、多くの方が被害を受けています。
これまでに、780万人以上のウクライナの人々が国境を越え、ヨーロッパ各国へ避難しています。
隣国のスロバキアでも、これまでに10万人以上の人々が難民として保護を受けてきました。
11月初めに、私自身スロバキアへ行き、今もなお避難生活を余儀なくされている方々からお話を伺う機会がありました。
ADRAの難民支援センターでボランティアとしてお手伝いしてくださっているイリーナさんもお話をしてくださった一人です。
ウクライナ中部にある都市、ポルタバで夫と11才の息子と3人で暮らしていたイリーナさんは、6月に息子を連れてスロバキアに避難してきました。
ウクライナでは成人男性の出国が禁止されているため、夫をウクライナに残しての避難となりました。
夫をおいて息子と2人だけで避難することに大きな躊躇いがあったものの、それでも避難を決断したのは、毎日鳴り響く空襲警報に怯えていた息子の精神状態が心配だったからだそうです。
警報が鳴る度にシェルターへ避難し、それでも安全とは言い切れず息子も家族も、何か月も恐怖に震える日々を過ごしたと言います。
ウクライナでは大学教授として仕事をされていたイリーナさんは避難先のスロバキアでは、資格を証明するための卒業証書など
複雑なスロバキアの労働法にあう形で資料を揃えることができず、いまだに定職に就くことができません。
イリーナさんには18才になる娘もおり、彼女はウクライナ危機が始まる前からスロバキアの大学に留学していたそうです。
今はその娘と、一緒に避難してきた息子と3人でスロバキアで暮らしながら、1日も早く仕事に就けるよう準備を進めています。
今の彼女の一番の心配は、ウクライナに残してきた夫の安全だと言いいます。
ウクライナでは激しい空爆により電力施設が次々と破壊される中、大規模な電力不足となっています。
イリーナさんの夫が住むポルタバのアパートでも2時間おきに停電が起き、彼は、窓が破壊された部屋でテントを張り、ろうそくの明かりで暖をとりながらなんとか暮らしているそうです。
そんな夫のために、できることならスロバキアから寝袋、暖かい衣類や靴、またヘッドライトなどを送りたいと言っていました。
また、携帯電話の充電も十分にできず夫とゆっくり話をすることすらできないため、モバイルバッテリーも送りたいと言っていました。
スロバキアで一緒に避難生活を送る2人の子どもと、ウクライナに残る夫を支えるために自分が1日も早く、この新しい土地で
定職を見つけなければと、とても力強いまなざしで語ってくれました。
そんなイリーナさんは、空いている時間にスロバキアの首都、ブラティスラバにあるADRA難民支援センターでボランティア活動に参加してくれています。
自分自身、戦争の被害に遭いながら、また言葉も自由に通じない新しい国での避難生活によるストレスも多い中、同じ思いでウクライナから避難してきた人々のために活動できることが、今は彼女にとって大きな心の支えになっているそうです。
家族のため、また、仲間であるウクライナ避難民の方々のためにと笑顔で話をしてくれたイリーナさんから、私も力をいただきました。
スロバキアには、彼女のように仕事をしたくても、言葉の違いや制度の違いにより、能力に見合った仕事につけずにいる女性がたくさんいます。
ADRAは、それらの女性の自立をサポートする支援も始めています。
私たちの活動を支えてくださっている皆さまの温かいご支援に心より感謝いたします。
(ウクライナ緊急支援担当 馬渕純子)
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