
2025年4月19日・20日、ADRA Japanは代々木公園で催されたアースデイ東京2025に参加しました。出展を記念して、事業部スタッフが日頃携わっている事業を環境やサステイナビリティの視点から紹介します。
「手押しポンプの水は酸っぱくて、鉄や錆のような匂いもするんだ。」
「黄色っぽくて、砂が混じっているしね…」
西ネパールのバルディヤ郡は、水衛生分野において全国指標と比較しても後れを取っています。上水道普及率は、わずか7.4%。掘り抜き井戸使用率は、なんと90%にも上るのです。ADRAは、ヤマハ発動機株式会社と手を組み、 ダケラ村の257世帯へ同社の浄水装置の設置を決めました。
河川の水を汲み上げ、自然界の微生物・砂・砂利を層状に配置したタンクで、ゆっくりとろ過し、浄化していきます。浄水生産量は1日8,000L。約2,000人にきれいで安心して利用できる水を供給することができます。これは、脱炭素を実現する、太陽光発電による再生可能エネルギーを活用して稼働するため、まさに自給自足システムと言えるのです。
浄水装置を設置するにあたり、土地は住民の有志で無償提供されました。提供者のハリさんは次のような思いを話してくれました。
「この土地は、娘のために残しておいたものだ。しかし、村の人々の健康に繋がるのであれば、喜んで提供しよう。どこまでも好きなだけ使ってくれ。」

2023年夏から本格的に建設が開始し、冬には日本とインドネシアから3台のコンテナがこの村にやってきました。現地の建設会社や住民の協力を募り、約半年をかけて建設・設置作業が進められ、2024年2月に無事引き渡し式を開催することができました。

設置から1年経過した今、ADRA Japanスタッフが住民の声を拾ってきました。
「この水はおいしいし、ほぼ毎日飲んでいるよ」

「子ども達や家族の病気(腹痛、下痢、咳)が減ったし、病院にかかる回数も少なくなったわね。」

さらに、この地域で活動する女性地域保健ボランティア(FCHV)にも話を聞いてみます。
「浄水装置の水を飲み始めてから、処方薬を出す疾患のケースが減ったことを感じる。」
「下痢症や呼吸器系疾患は、以前の月4-5件あったのに、最近は0件よ。」
ダケラ村と地域全体が、浄水装置の必要性を感じているのが伝わってきました。
一方、この水の供給を守るために、水衛生委員も活動を続けています。毎日の取水・配水作業は手作業で、装置の清掃も定期的に行われているため、敷地内は清潔な状態が維持されています。毎月、住民からの水料金徴収も行っており、集められた資金はメンテナンス維持費に使われる予定です。しかし、まだ5年・10年先を見据えた資金管理を想定できていない課題もあるため、委員会リーダーは、提案します。
「住民と我々が意見交換をできるような総会を開こう!」
住民の前向きな姿勢も見られ、ADRAも残り1年、彼らと一緒に歩んで行きたいと考えています。

環境にやさしいヤマハ発動機株式会社の浄水装置がネパールへ設置されたのは、今回が初めてです。しかし、私たちも、ダケラ村の住民も、これがゴールではないと理解しています。ここから持続可能性を担保とするために取り組まなければ意味がないのです。
今後、長きに渡って、この村で安心して誰もが口にできる水が供給されるよう、住民に寄り添いながら尽力していきたいと思っています。
(執筆:渡辺 陽菜)