これは小学生の娘が書いた絵です。
![](https://www.adrajpn.org/wp2/wp-content/uploads/2-10-1.jpg)
娘はアート教室に通っています。教室はその週によってテーマが設けられ、絵画の週もあれば立体製作の週もあり、「絵画」といってもいろいろな技法を教えてもらったうえで、各自製作に取り組みます。娘がこの絵を仕上げた回は、確かテーマが「雪だるま」でした。雪だるまの白い部分は画用紙の色を活かし、まわりを描くことで雪だるまを浮き立たせるという練習だったと記憶しています。
この絵を描いた日、娘は学校で嫌なことがあり、アート教室に向かう車の中ではずっと苦虫を嚙み潰したような顔をしていました。「おかあさーん、今日○○の時にさー」と辛いことを話しながらも気持ちは晴れず、あっという間に教室に着いて別れました。
1時間15分のレッスン時間が終わる頃、迎えに行くと、鬱陶しい雲が晴れたような爽やかな表情で娘が絵を手に持ち、スキップに近い足取りで近づいてきました。
「今日これ描いた~。あ~楽しかった! 最高なんだよ、おしゃべりもできるし」
娘はそう言いました。たった1時間15分のレッスンで、曇った娘の心を晴れにしてくれる教室に感謝した日でした。この教室は芸大卒の若い先生や、小さくて可愛いイラストのタトゥーを入れている先生なんかもいて、学校の先生とは違う、自由を感じられ、身近な雰囲気が娘には合っているようでした。
私たちは、国内で被災した地域で移動カフェや足湯などを提供しています。物の支援はもちろん、物だけではなく個別に相談に乗り、細かな困りごとへの対応も心掛けています。被災すると住民の方々は家のこと、お金のこと、家族のこと、健康のこと、生活のこと、様々なことに不安や心配がつのり、日に日に疲弊してしまうことがよくあります。まさに突然目の前に現れた沼に足を踏み込んでしまったかのように——— 。
そんな状況において、私たちは1回の足湯で住民の方を沼から出すことはできないかもしれません。しかし、お腹までつかりそうだったところを膝が見えるまで出すお手伝いはできると思っています。他の団体からの助けで、そこから足首まで見えるようになるかもしれません。またちょっと沈んでしまっても、再度私たちが足湯をさせていただければ、再び足首が見えるかもしれません。
そんな風に、一種類ではなく、何通りかの方法で、その人に合った、タイミングに応じた支援があることで、きっとまた硬い地面の上を踏みしめながら、草むらを歩いたり青空を見上げたりできるのではないでしょうか。
娘の描いた「雪だるま」からそんなことを思っています。
(執筆:三原 千佳)