我が家は家族全員がサンタクロース!

私には、6歳の娘と4歳の息子がいるが、「うちにはサンタさんはやってきません。」と公言している。それにも関わらず、二人はクリスマスを心待ちにしている。

娘が3歳を超えてサンタクロースを意識し始めたころ、その存在についてどういう立ち位置をとるべきか、私は親として真剣に考えた。私自身は8歳の時に、それまで自分がサンタクロースだと思っていた人物は、親だったと結論付ける経験をした。https://www.adrajpn.org/staff-thoughts/10974/

しかし、相手は輝くソリに乗って鈴を鳴らし、高らかに笑いながらプレゼントを配る、いかにも包容力のあるおじいさんだ。そんなもの、子どもじゃなくても信じたいに決まっている。自分の悲しい経験だけを基に否定することは、我が子の夢を奪うようで気が進まなかった。それに、娘の友達の殆どはサンタクロースを信じているだろう。そんな中で、子どもにとって絶対的真実である母親から「サンタはいない。」と告げられたら、子ども社会での辻褄があわなくなり、混乱することが想像できた。

そうであれば単純に、サンタクロースはいると伝えれば良いと思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。私自身のところにはきていなかったのだから、存在を肯定する根拠がない。相手が子どもでも、自分にとって事実ではないことは伝えたくなかった。それにクリスマスが近づくと、幼い子どもを抱える親たちは、その存在を利用して我が子を良いようにコントロールしようとする。「いい子にしないと、サンタさん来ないよ!」は、日本でもアメリカでもよく聞かれるセリフだが、私はこれに疑問を感じていた。この発言は、「あなた達子どもへの愛は、条件付きですよ」というメッセージを与えるからだ。サンタクロースが配るのはプレゼントだが、それは形のない愛を具現化したものに過ぎない。大人にとって良い子でも悪い子でも、子どもは愛されるべき存在だ。更に、この言葉を発する親たちはいずれにせよプレゼントをあげるから子ども達が悲しむことはないが、経済的な事情などからプレゼントが貰えない家庭の子ども達にはどう響くだろうか。「自分は良い子じゃないからサンタが来ないのだ。」と思わなければならない。親がなんとかプレゼントを工面しても、その数や大きさを自分の「良い子度」と結び付けかねない。夢と希望を与えるはずのサンタクロースによって裏で傷つく子どもがいるかもしれないと思うと、そう易々と認めることはできない。

私がここまで考えるのは、サンタクロースがいなかったことに深く傷ついた経験があるからだろう。だから、いつかサンタはいないと結論付けるかもしれない我が子に対し、無責任なことは言うべきではないと感じていた。ただ一方で大人になってからは、自分のところに来なかったからと言って、いないことの証明にはならないと考えるようになった。幽霊も妖怪も宇宙人も見たことはないが、見えるものだけが全てではないのだ。サンタクロースもその類なのかもしれない。事実、愛は見えないが確かにある。サンタクロースが配るものがプレゼントに形を変えた愛ならば、その存在が見えなくてもおかしくはない。

サンタの存在を否定したくはないが、肯定もしたくない。考え抜いた末に私が子ども達に伝えている内容はこうだ。

「ママには、サンタさんがいるかどうかはわからない。ママのところには来なかったし、だーだ(父親)のところにも来なかった。だけど、ママはサンタさんが居たとしたらこう伝えるよ。『うちにはこなくて大丈夫です。サンタさんはプレゼントと一緒に愛を配っているけれど、うちには、もう充分な愛があります。うちよりも愛が必要な場所があると思うから、うちの分もそこに持って行ってください』。サンタさんにはママのこの気持ちが伝わっているから、うちには来ないんだよ。」

そして必ずこう続ける。

「だけどね、サンタさんが配っているのが愛なんだったら、うちは家族全員がサンタクロースだね!」

娘から見た、いとこ家庭には、毎年クリスマスの日にサンタさんが現れる。白髭をつけ赤い服と帽子に身を包んだ父親がチャイムを鳴らし、インターホンを覗くとサンタクロースがプレゼントの入った袋を置いて去っていくところが見えるのだ。2歳年上のいとこは、サンタクロースを信じきっている。この話を聞いても、娘が羨ましがることはないし、いとこ家庭を「自分の家よりも愛が必要な家庭」と認識することもない。

「私の家はね、みんながサンタクロースなんだよ♪」

そう言いながら、興奮気味に笑う。初めて聞いた時にはきょとんとしていた私の説明だったが、それから何度かクリスマスを経験して、サンタクロースの本質がわかったからだろう。自分の家庭と、他の家庭の在り方の違いも素直に受け入れることができている。

というわけで、我が家のクリスマスには、白髪に青い目をした恰幅の良い老人は登場しない。しかし、プレゼントは勿論、笑顔も愛もたっぷりだ。去年のクリスマスは、娘から絵をもらった。今年は何が貰えるだろう。今日保育園から帰ってきたら、プレゼントの用意をリマインドしよう!

(執筆:守屋 円花)

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