「何も残っていない。住む場所もない」と語るアラさんの希望とは

1,000日――ウクライナで多くの人々が家を失い、支援を必要とするようになってからの時間です。砲撃の音におびえる1,000日の夜。戦争の終わりを願い続けた1,000日の朝。耐え難いほど長い日々が今も続いています。

特に高齢者は、本格的な戦争がもたらした過酷な現実の中で、最も脆弱な立場に置かれています。自力で家を修繕するどころか、生活そのものを維持することすら困難です。

焼け落ちた家を前に願うこと

2023年撮影 キーウ地方ブチャに住むアラ・トロヴェッツさん

写真のアラ・トゥロヴェッツさんは、キーフ地方ブチャ地区に住む女性で、既に定年退職をされています。戦闘によって彼女の家は完全に焼失しました。

 「すべてが焼け落ちました。何も残っていないんです。住む場所さえありません」。

そう語る彼女の声は、あまりに静かで、深い悲しみを物語っているようでした。

厳しい寒さに立ち向かう日々

義理の息子さんが作ったテントで暮らしていたアラさんは、昨年の冬、金属製のシェルターに移り住みます。彼女が指さす先には、日本の工事現場で見かけるようなプレハブがありました。プレハブは、早く安く建てることができる特徴がありますが、外気温が室内にそのまま影響しますし、隙間風も吹き込みます。

電気の供給があれば小さなヒーターを使い暖をとることもできますが、戦争の影響で停電が頻発し、アラさんたちは凍てつく寒さに体を丸めて過ごさざるを得ませんでした。

「小さくてもいい。自分たちの力で凍える寒さから身を守れる家が欲しい」

アラさん家族の収入は、家族に障がいのある人が3人いることで受け取れる2,000フリブニャとアラさんの年金3,400フリブニャの合計5,400フリブニャ(約20,300円)です。衣服や毛布、食器などの日用品もすべて失っており、生活していける金額ではないとアラさんは肩を落としました。

「多くのウクライナ人が同じような状況にあります。それでも、私たちは希望を捨てません。この世界には優しい人がいる。助けがあれば、必ず生き延びられると信じています」

届いた希望

アラさんは昨年、行政機関を通してADRAから住宅再建のための資金援助、43,500フリブニャ(約16.4万円)を受け取ることになりました。「とても嬉しくて、急いで資材を買いにいきました」と話す声には、支援を受けられるとわかった瞬間の驚きと喜びがにじみ出ているようでした。インタビューの最後に、「ありがとう。本当にありがとう」と何度も繰り返す声が、温かさとなって耳に残っています。

2024-2025の冬を超えるためのADRA越冬支援

ウクライナの状況は深刻で、支援を受ける前のアラさんのような状況にある人がまだまだ大勢います。町の暖房システムが破壊され、電気の供給も不安定なうえ、地雷の影響で人々は薪を取りに行くこともできません。寒さをしのぐための支援が不可欠になっている中、ADRAのような人道支援団体の活動が、人々の唯一の希望となっています。

この冬、ADRAは次のような支援に取り組んでいます

・食料支援
・暖房のための固形燃料の配付
・必要な物資を購入できる現金給付
・病院への支援(温かいマットレスや治療に必要な機器)
・心のケア

これらの支援は、ただ生活を支えるだけでなく、人々の心に希望という灯火をともします。支援を届けるというひとつの行動は、あなた自身の心にも温かさを届けるはずです。ご寄付により活動を支えていただけますよう、お願いいたします。

(広報担当:永井温子)

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