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前回に引き続き、バングラデシュに渡航しているスタッフから届いた出張記をお届けします。
翌朝ホテルから事務所への移動は午前9時を過ぎていた。人々が既に1日をスタートさせる時間で、ダッカ市内の渋滞もすでに始まっていた。これまで私はADRA支部がある2つの国、ジンバブエとスロバキアで車移動を経験しているが、バングラデシュの交通事情は比にならないほどのカオスだった。クラクションを鳴らしながら、自分が通る方向に強い意志をもって進んでいかなければ身動きがとれなくなってしまいそうだ。車線なんて存在しないも同然だった。これまでインドやベトナムなど旅行でそれぞれのカオスとそこで生活を立てる人々のエネルギーを感じてきたことがあったが、今回は仕事である。まっすぐにわが道を信じているだけでは、物事が動かないこの国での仕事の壁は、私には未知の世界であった。
40分ほどで事務所の敷地に着いた。教会や学校、職員たちの宿舎もあり、大きな敷地には緑が溢れていた。事務所に入ると、すぐにスタッフたちが挨拶のために会議室に集まってきた。総勢14人の小さな事務所である。歓迎のために、目の覚めるようなオレンジ色のマリーゴールドで作った首輪をプレゼントしてくれた。バングラデシュ支部のスタッフたちがまず自己紹介した。オンライン会議で仕事をしてきた顔ぶれもそろい、対面で会える喜びがジワジワと沸き起こった。私は、1か月ほど前から始めたオンラインレッスンで習ったベンガル語も混ぜて自己紹介をした。少し驚いたスタッフたちの反応が嬉しい。その後ジュニアプログラムオフィサーのティロがデスクまでの案内をしてくれた。
日本人駐在員が誰もいない支部に来るのは、スロバキアに次いで、私にとって2回目の経験だ。仕事の仕方も全く異なる支部の事務所の席に着いたとき、ふと「ああ、また自分はここからスタートするんだな…」と感じた。こんな時支部には必ず声をかけてくれるスタッフたちがいる。横の席に座ってしばらくして「椅子の高さは大丈夫?居心地悪くない?」と聞いてくるティロのあまりの気遣いに心の中でクスリと笑いながら、感謝の気持ちを噛み締めた。
(執筆:髙橋睦美)
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次回のバングラデシュ出張記も、楽しみにお待ちください。