サンタさんに託す思い

細見家では、中学校1年生のクリスマスが近づくと、「サンタさんの真実」が解き明かされる。

12月の肌寒い季節。リビングにあるこたつで暖を取っていると、“その時”が突如として訪れた。隣に滑り込んできた母が、少し真面目に、でも顔を緩めながら話し始めた。

 「私はサンタさんっていると思うの。だけど真菜には両親がいて、プレゼントを買う余裕もあるでしょ?だから、これまではお父さんとお母さんが、その代わりをしてきた。きっとサンタさんは、もっと貧しかったり、戦争で困っている子どもたちのところにプレゼントを届けに行っているんじゃないかって思っている。今年から“サンタさん”は来ないけど、クリスマスにお買い物行って、一緒にプレゼント買おうね。」

小学校高学年になり、薄々両親がサンタをやっているだろうと勘付いてはいた。だが、小学校2年生のクリスマスには、24日の夜に準備した人参とクッキーがかじられた跡が残されていたし、イギリスで生活していた際、そこでは手に入らないはずの日本のゲームソフトが届いた。だからサンタさんの存在を、私は完全に否定することもできないでいた。

真実が語られたとき、私は「ふーん」と答えた。決してショックだったわけでもなく、ただ、そうなんだと心に落とし込んだ。

大人になった今、サンタさんの存在をうやむやにしながら、プレゼントが配られなくなるのではなく、子どもに本当のことを伝えた両親の誠意ある言動はよかったと感じている。また、私のために両親が試行錯誤してくれていたのかと思うと、その愛情の深さも。

ADRAでは紛争下にあるウクライナや、スロバキアに避難してきたウクライナの子どもたちに向けて、クリスマスギフトを届けている。世界には過酷な環境により、クリスマスプレゼントどころではない、子どもたちや家庭が多く存在している。私たちが届けられるところにはADRAが、より紛争の前線で危険な地域の子どもたちは、サンタさんに託したいと思う。

昨年のクリスマスにプレゼントを届けたハルキウ小児病院の子ども

細見真菜

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