壊れた井戸から流れる水【ジンバブエ便りVol. 12】

10月は、毎年ジンバブエでシーズン初の雨が降る月です。今年も、期待を裏切らずに10月1日から雨が降り始めました。10月初旬は雨が降ったり止んだりの日々が続き、中旬から下旬にかけて本格的に雨季が始まります。

ADRA Japan が現在行なっている事業では、7つの小中学校に、地下数十メートルから水を汲み上げる深井戸を設置しています。事業地のゴクウェ・ノースでは、何十年も前に設置されたものから、コレラ蔓延後に新たに設置されたものまで、数多くの深井戸があります。

これらの深井戸は、ハンドポンプが適切に備え付けられていなかったり、パイプが錆びてしまっていたりすると、水が出なくなってしまいます。基本的には部品を取替えたり、簡単な修理を施したりすれば再使用可能となります。

ところが、これまでに設置された井戸の多くは、住民に適切なメンテナンス方法が伝授されていなかったことが原因で、故障したままの状態で放置されていました。

このような背景から、現在の事業では、地域の人々が井戸の修理や管理を適切に行なうことができるよう、ゴクウェ・ノースの地方政府から井戸の専門家を招き、深井戸メンテナンスのためのトレーニングを実施しています。

このトレーニングでは、コミュニティーによって選ばれた住民の代表たちが、講義と実技を通して、故障して水が出なくなっていた井戸を実際に修理しました。

深井戸の修理では、まず頭の部分に当たるハンドポンプを解体することから始めます。
ボルトを一つ一つはずし、少しずつ解体していきます。

ハンドポンプの解体の様子

井戸の内部には、水をくみ上げるためのパイプが通っています。その全長は、井戸の深さと同じである必要があります。深さ70メートルの井戸の場合、1本3mのパイプ23本を接続して1本の長いパイプにします。接続後のパイプはとても重いので、修理の際には巨大な三脚を使って取り出します。

巨大な三脚の使用

 

ハンドポンプとパイプを取り除いた後の井戸

 
今回修理した井戸は、パイプの接続部分が錆びてしまっていたため、その部分から水が漏れてしまい、水をしっかりと汲み上げられていなかったことがわかりました。そこで、錆びてしまったパイプの結合部分を切り落とし、新しく切り込みを入れることによって水漏れしないように修理しました。

パイプの修理の様子

 
設置されている深井戸は、行政やNGOによる地域の人々への単なる「贈り物」ではありません。乾燥地帯で生活する人々にとって、清潔な飲み水が手に入る深井戸は、自分たちの命を守る貴重な「財産」です。

これらの財産が継続的に使用されるためには、住民たちが「この深井戸は自分たちのものである」という認識を持って大切に扱うと共に、維持管理のための技術を身につける必要があります。

このような人々の生活を支えていくために、ADRAでは今後も地域の人々と協働して、事業を続けて参ります。

 

トレーニングを終えた住民と修理を経て水が出るようになった井戸

(文責:ジンバブエ事業担当 前田絵梨子)

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